F&Aレポート

職場の「ちゃん付け」「くん付け」

 先日、職場で「○○ちゃん」と名前を呼ばれたのはセクハラだとして、40代女性が年上の元同僚の男性に約550万円の慰謝料を求めるという裁判がありました。

 東京地裁は、「許容される限度を超えた違法なハラスメント」と認定し、22万円の支払いを命じました。

 判決などによると、女性が都内の営業所に勤務していた2020年以降、男性から名前をちゃん付けで呼ばれていただけでなく、「かわいい」「体型が良い」など言われ、女性は21年にうつ病と診断され、その後退職したということです。

 裁判官は、ちゃん付けは幼い子どもに向けたもので、業務で用いる必要はないとして、男性が親しみを込めていたとしても不快感を与えたと指摘しました。また、一連の発言を含め「羞恥心を与える不適切な行為だった」と判断しました。

 女性は23年、男性とともに使用者責任に基づく損害賠償を求め会社も提訴。今年2月、会社側が解決金70万円を支払うなどで和解したといいます。

 では、「くん付け」はどうなのでしょうか。

 もともと「くん」は目下や後輩に対して使う敬称で、日本語では「上→下」への呼び方として定着しています。ビジネスでは「部下や後輩社員」に使われてきました。

「さん」よりも親しみのある印象で、指導やコミュニケーションが柔らかく感じられるので、上司、先輩が部下を呼ぶときの自然な言い方だと思われます。

 一方で、男性には「くん」で女性には「さん」となると、ジェンダーバイアスが生じると見られることがあります。また、上下関係が強調されるため、取引先や外部関係者に「くん付け」は失礼にあたります。

「親しみ」を込めたつもりが仇となるなら、初めから「さん」で統一ということになるのでしょう。今の時代、職場のコミュニケーションは難しいですね。