社会課題を解決する「神の宿る草」真菰(まこも)
「真菰(まこも)」という植物をご存知でしょうか。
「真菰」と聞いて「鬼滅の刃」を連想する人もいるかもしれません。主人公の炭治郎が修行をしているときに、狐のお面をつけて突然現れる真菰。可愛らしくて不思議な雰囲気をもつ少女です。真菰は、神秘的なパワーを持つ存在なのです。
本来、真菰とは川や田んぼなどに自生するイネ科の大型多年草で、東南アジアを中心に広く分布しており、夏になると草丈が1mから2mにもなる強い生命力のある植物です。
日本で真菰は神々の時代から実在しており、古事記や日本書紀、万葉集などにも記述があるほど、神事にとどまらず日本人の暮らしにおいても身近な植物でした。
近代では護岸工事などであまり見かけなくなりましたが、この真菰が水質改善、土壌改良、ひいては心身の健康、良質な睡眠に効果が期待できるとのことで、中山間地域や休耕田に真菰を栽培しサステナブルな社会を目指そうという小さなプロジェクトがあります。
あらゆる社会課題を解決するとも言われる「真菰」。これから貴方も身近なところで見かけるようになるかもしれません。
1、出雲大社 本殿のしめ縄にみる真菰
神話では地球上にまだ植物がないころ、スサノオ(須佐之男命)が最初に地上に植えた植物が真菰とされています。出雲大社の御祭神は大国主大神ですが、本殿の裏側に素鷲社(そがのやしろ)があり、御祭神はスサノオ。
出雲で6月1日に行われる涼殿祭は通称「真菰神事」と呼ばれ、山の神を迎える神事です。神様がお通りになる道には砂と真菰が敷かれ、参拝者はその真菰を持ち帰り、お風呂に入れて入浴し無病息災を願うというしきたりがあります。また、しめ縄の多くは稲わらでできていますが、出雲大社本殿と瑞垣内摂社のしめ縄は真菰でできています。
お釈迦様は、真菰の葉の菰(むしろ)に病人を寝かせて病人に治療をしたと言われていますが、菰(むしろ)は真菰で編むのが、真の菰(むしろ)であることから真菰と言われています(今は稲わらで編むことが一般的)。
真菰は浄化作用が高く、近年の研究で新たな薬効も発見されています。
2、豊富な栄養素 マコモダケ
2m近くまで成長した真菰に黒穂菌が寄生し茎の部分が肥大したものを「マコモダケ」と言います。たけのこに似たサクサクとした食感と歯ごたえ、ほのかな甘みがあります。癖がないので炒めもの、煮物、焼き物など様々な料理に利用できます。
現在では休耕田を利用して全国各地で作られていますが、生産量が少ないため市場に出回ることは少ないようです。食物繊維が豊富で、腸内環境を整えるカリウムが塩分の排出を助けてくれるなど、体の中を綺麗にしてくれる効果が期待できます。また、浄化、毒素排出の効果があると古くから言い伝えられ、葉をお茶や入浴剤として利用している人もいます。
3、中山間地域の活性化 サステナブルな社会
真菰を栽培することで、水や土地が浄化され、土壌の微生物が活発に働くようになります。また、真菰は稲作に比べて栽培が容易で、自然栽培で肥料も農薬も必要ありません。急速に増えた中山間地域の休耕田に対して真菰栽培を提案することで、耕作放棄地を蘇らせることは、日本の環境保全及び、保水力の向上による土砂災害回避などにもつながります。真菰の効能を通じて健康な体作りを推進するとともに、中山間地域の休耕田を利用した新しい産業の創造も期待できます。真菰の可能性は循環型社会を実現させるかもしれません。(まこもプロジェクト)
4、真菰は縄文人の食料だった?
イネ科の植物である真菰は、稲作が渡来する以前から日本全国に分布し、沼や河川、湖などの水辺に自生していたと言われています。
真菰の歴史は古く、縄文時代の遺跡から真菰の種子が検出されたことから、縄文時代の食料だったという説もあります。万葉集では「蔦枕(こもまくら)」という名称で登場します。