F&Aレポート

「すみません」を「ありがとう」に変換

「すみません」を「ありがとう」に変換

「すみません」はとても便利な言葉です。「外国人には、まず『すみません』を覚えてもらう」という日本語教師もいます。

 コンビニに行って買い物をするときも、駅で行き先を尋ねるときも、「すみません」は多様に使えます。

 以前、「すみません」だけのセリフで、ほぼ成り立っている寸劇を見たことがあります。それは、蕎麦屋で注文をするお客さんと店員の会話でした。

 客席から「すみません」と店員を呼ぶ、「すみません」と店員が駆けつけてくる、お客さんがメニューを指差して「すみません、これ」というと、店員が「はい、こちらですね、すみません」と注文を受ける。そして、「すみません」と蕎麦が運ばれてくるといった内容でした(笑)

 260年以上もの間、経済の繁栄と戦争のない平和な時代を築いた江戸時代の、よりよく生きるルール「江戸しぐさ(繁盛しぐさ)」では、「すみません」は「澄みません」と書き、澄んだ気持ちになれなかったことを詫びる言葉でした。

 江戸しぐさでは、常に相手に対する尊敬の念を忘れず、ひとこと気配りのある表現をすることが、たしなみとされていたのです。

 また、「すみません」と言われると、こちらも「いえいえ、こちらこそすみません」と返したくなるもの。これは、相手側にも気を遣わせて詫びさせているようなものです。

 それは円満で良い面もあるのですが、現代は「すみません(澄みません)」で溢れて、よどんでしまっていませんか。そこで、何かしてもらったときの「すみません」は「ありがとう」に代えることも一手。「すみません」よりも「ありがとう」と言われた方が、嬉しいこともあります。できればついでに笑顔も添えると「澄まない」気持ちが「澄んだ」気持ちになるのではないでしょうか。