F&Aレポート

「新卒がすぐ辞める」企業の採用活動における「給与面以前の大きな問題」

「新卒がすぐ辞める」企業の採用活動における「給与面以前の大きな問題」

●「キャリア形成」と聞くと、日本では「仕事に必要なスキルを身につける」というように考えられがちですが、本来は職務経験だけでなく、結婚、出産、定年、その後の生活に至るまで、人生全般を主体的に構築し、自分が納得できるワーク&ライフを実現させる(自己実現)という意味です。

●中学・高校にキャリア形成の出前授業に行くと、ほとんどの生徒は自分自身が「就きたい職業」「なりたい将来像」がはっきりしていません。「自分が何をやりたいかわからない」「自分が何に向いているのかわからない」と言います。もちろん、中には将来の夢をはっきり持っている生徒もいます。しかしそれは私が見た限りでは1割程度です。

●「就職のイメージがわかないのでとりあえず進学する」「とりあえず先生が薦めてくれた企業の面接を受ける(就職する)」という受け身的な態度で将来への一歩が始まり、やがて「思っていたのと違った」ということで、仕事を辞めるパターンは珍しくありません。そんな中、気になるネット記事を目にしたのでご紹介します。「ミッションドリブン・マネジメント」鳶本真章氏著

1、「○人採用」が目標という問題

 過去の実績+現在のポジションで空いているところを埋めるという考え方で採用人数を決めているところがほとんどです。その上で良さそうな人トップ200人を採用したいのに、100人しか面接に来てくれない、どうしたらいいか、という相談をよく受けます。

 もちろんたくさんの人が「働きたい!」と言ってくれればそれに越したことはありません。いい人材を選びやすくなります。しかし、その前に「どういう人材が欲しいのか」が明確でなければいけません。一般的な「いい人材」が、その会社にとって「いい人材」かどうかはわかりません。

 本来、会社のミッションに共感していることが最重要なはずです。ミッションのためにモチベーション高く行動できる人材こそ、その会社が欲しい人材です。

 しかし、明瞭な人材像がないまま採用活動をすると、どうなるか。目標の200人を採用できても、辞める人が多くなります。とにかく200人採用できれば1年後に50人しか残っていなくてもかまわないのでしょうか。200人採用して150人辞めるなら、最初から「辞めない50人」を採った方がいいでしょう。採用、教育にはコストがかかりますし、引き継ぎ時のトラブルなどのコストも発生する場合があります。

 また、「こんなはずじゃなかった、辞めたい」という思いで仕事をするのは、本人にとっても職場にとってもいい影響はありません。

 「新卒○人、第二新卒○人」と目標が決まっているケースもありますが、これも正当な理由がないことが多いです。長期間かけて社員を育成していく必要があって新卒にこだわるというならわかりますが、ほとんどの場合は「慣例」でしかありません。

2、「最近の若者はすぐ辞める」

 厚生労働省の調査によれば、3年以内に離職した新規学卒者は、高卒で約4割、大卒で3割(令和2年度)、産業別では「宿泊業・飲食サービス業」の3年以内離職率が最も高く、高卒で約6割、大卒で約5割です。

 なぜ、そんなに多くの人が辞めてしまうのか。「最近の若者は」と言いますが、辞めた本人だけに責任があるわけではないでしょう。

 内閣府の調査では、若者(16?29歳)がはじめて就職し辞めた理由は「仕事が合わなかったため」が最も多く、約4割の回答となっていました。現代は終身雇用の時代ではなく、「合わないなら辞めていい」がスタンダードになりつつあります。

 昔は、合わないと思っても会社を辞めるハードルは高く、長く勤めれば賃金や役職が上がり優遇される仕組みになっていました。転職市場も小さかったのです。

 そう考えると、現代の新入社員が「仕事が合わないから」といって辞めていくのは当たり前です。合わない仕事に向き合って長くい続けるメリットがありません。「最近の若者は我慢が足りない」といった考えは間違っています。

*「会社のミッションは立派でも現場には反映されていない」「採用時に聞いているのと、実情が違う」といった声はよくあります。会社、人事、現場のリーダーが一丸となって「人を大事にする」習慣、文化を創ること。「会社に合う人を採用」し、採用後には給与、福利厚生といった仕組みだけでなく、能力開発、自己啓発といった教育を含め、本人のキャリア形成をどう構築していくのかという息の長いフォローをしていく関わりが必要です。「この会社で働き続けるメリット」を全社挙げて伝え、実行していく機運をつくっていきましょう。(織田)

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