二つの「鏡開き」にみる日本の心
1月11日は「鏡開き」です。お正月の間、歳神様にお供えしていた鏡餅を割って雑煮やおしるこなどにして食べ、無病息災や家内安全を願う行事です。
歳神様が宿る「鏡」に見立てたお餅を開く(割る)ことで歳神様をお見送りし、お餅を食べることで歳神様の恩恵を心と体に取り込み一家の円満を願うというしきたりです。
最近は、小分けにした餅が入った鏡餅が多いので、大きなお餅を割るという習慣はあまり見かけないかもしれませんが、もともとは武家の習慣として伝えられてきました。
刃物で切るのは切腹をイメージさせるのでご法度。手で割るか、木槌で割るのが習わしとなっています。
「鏡」は平和や円満、「開き」は末広がりの意味。「餅を切る・割る」ではなく、「鏡を開く」という縁起の良い言葉が使われているのも日本人ならではの感性といえるでしょう。
ところで結婚式や新築パーティなどでも、日本酒の樽を木槌で割るという「鏡開き」もあります。
古来よりお酒は神様への供物で神聖なもの。神聖なお酒の入った樽の蓋を鏡に見立て、鏡を開いてお酒を飲み神様の力を授かるという意味や、木槌を使用し「開く」という言葉が使われているのも、お餅の鏡開きと同様です。
ただお酒の場合は、年始の行事というよりも「特別な日」を祝うための行事という意味が強く、「鏡開き」に使われる酒樽も、吉野杉で作られた木樽に「菰(こも)」というムシロが巻かれたものを使用します。
ちなみに、セレモニーなどで「鏡割り」をする際は、あらかじめバールなどで一度蓋を開けてタガを緩ませておきます。実際にはしっかりと密閉された酒樽の蓋は木槌で軽く叩いた程度は開きません。
いずれにせよ「鏡開き」で気持ちの良いスタートができるといいですね。