F&Aレポート

仕事・キャリアについて ~あなたが長い時間をかけて創りあげる仕事とは

仕事・キャリアについて ~あなたが長い時間をかけて創りあげる仕事とは

「働き方改革」を掲げた安倍内閣から、菅新内閣へと時代は移りましたが、私たちの仕事やキャリア・デザインは、今後もますます変化が加速していくのでしょう。
 リアルとリモート、都心と地方、量と質、ワークとライフ、異なるものを対比させながらバランスをとり、その折々でチョイスをしながら、人はより自分らしく働ける場所を模索し続けることになるのでしょう。

 なぜ働くか、どう働くか。主体的に考え行動する時がきました。『働き方の哲学』(村山昇著)から気になる一節をご紹介します。

1、ベートーヴェンが30年越しで完成させた第九『歓喜の歌』

 ドイツの詩人フリードリヒ・シラーは1785年『歓喜に寄せて』と題した詩を書き起こしました。ベートーヴェンは、1793年(23歳)のときにその詩に出会い、そこに旋律をつけようと思いつきます。

 当時すでに音楽家として頭角を現していたベートーヴェンでしたが、巨人シラーの詩は、まだ自分自身の器が追いついていないとみたのでしょうか、それに旋律をつけられず、歳月が過ぎていきました。

 そして『ベートーヴェン交響曲第九番』の初演は1824年。着想から完成までに実に30年以上。54歳で難聴となった体を乗り越えて、彼はついに一大合唱曲の建設を終えたのでした。『歓喜の歌』は現在、欧州連合の歌となり、世界中で最も敬愛される楽曲のひとつになっています。

 私たちは日々せわしなく働いています。一年ごとの目標管理は、半年ごととなり、四半期ごととなり、そして週ごとの報告があり、毎朝のミーティングがあり……。仕事の時間単位はそうやってどんどん短く区切られていき、その中でスピーディーに、効率的に、的確に判断し、処理する仕事が求められています。しかし、それとは対極に「長い時間×忍耐×創造性」によってのみ成し得る建設的な仕事があります。

2、「長い時間×忍耐×創造性」によってのみ成し得る仕事

 ベートーヴェンの『第九』のように、何十年越しというライフワークテーマを見つけ、その建設に自己を投じられる人は、幸福な仕事人でしょう。
 短期的な時間サイクルの中で自分を回転させるのではなく、長期的な時間軸に立って、大きな表現に挑んでいく。そうした意識に目覚めた人だけが、建設の仕事の喜びを知ることができます。

 あなたが長い時間をかけて創り上げる仕事とは何でしょうか。

私が13歳のとき、宗教の素晴らしい先生がいた。
教室の中を歩き回りながら、
「何によって憶えられたいかね」と聞いた。
誰も答えられなかった。
先生は笑いながらこういった。
「今答えられるとは思わない。
でも、50歳になっても答えられなければ、人生を無駄にしたことになるよ」(ピーター・ドラッカー『プロフェッショナルの条件』)