ハラスメント~どこまでが指導で、どこからがパワハラか?
厚生労働省は11月15日、労働政策審議会の分科会を開き、過労自殺を含む精神疾患の労災認定の理由となる項目を整理し、新たに「パワーハラスメントに関する出来事」を加える方向で検討を進めると明らかにしました。
パワハラを巡っては、防止を企業に義務付ける女性活躍・ハラスメント規制法が5月に成立。厚労省は来年6月の施行に向け、企業に対策を義務付ける指針策定を進めています。労災認定の項目を儲けることで認定件数を明確にして、防止を進める狙いもあります。
パワハラについては、高額な和解金を伴う判例が多くみられるようになるだけでなく、マスコミ、SNSへの情報流出による企業イメージのダウン、優秀な人材の流出、リクルート等への悪影響などがあり、大企業だけでなく中小・零細も、遅ればせながら対策に乗り出し始めたという現状のように見えます。
研修・指導を行うと必ず質問に挙がる「パワハラの定義」と、「パワハラと指導の境界線」についての基礎知識をまとめてみたいと思います。
パワハラの定義
パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」です。この中の「業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」とは、具体的にどんな行為を指すのでしょうか?
厚生省では、次の6つのタイプに分類しています。
<職場のパワーハラスメントの行為類型>(すべてを網羅するものではない)
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
(3)人間関係からの切離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求 (業務上明らかに不要なことなどを要求、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害など)
(5)過小な要求(業務上合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる。仕事を与えない等)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
パワハラと指導の境界線
指導は「教え、導く」ことです。厳しく叱ることはあってもそこには相手の成長を願う思いが根底にあります。パワハラと指導では、目的、態度、業務上の必要性などに明確な違いがあります。「パワー・ハラスメント防止ガイドブック」(人事院)に掲載されているものをご紹介します。
それでは、どんな指導をすれば良いのでしょうか。パワハラと訴えられるのを恐れて適切な指導ができないようでは、管理者の務めは果たせず、組織は成長しません。(次回につづく)