餞(はなむけ)のことば
三月は別れのシーズンです。卒業や異動、退職などで、お世話になった方との別れを余儀なくされる方もあるでしょう。
かつて日本では、旅立つ人のために「送別会」をする際に、道中の無事を祈って、その人の馬の「鼻」を、これから向かう目的地の方向に「向けて」やる習慣がありました。
これが「鼻向け」です。ここから「はなむけ」という言葉が、旅立ちや門出を祝福して金品や激励の言葉を送る意味になりました。(NHK放送文化研究所)
「はなむけ」は、「餞」と書きます。これは「餞別」の「餞」です。餞別とは、去って行く人に送るものです。
最近の傾向で、「新入社員」や「新たに来た人」に対して「はなむけの言葉を送る」と、誤用されているのを見かけます。世論調査においても「社長が新入社員にはなむけの挨拶を行う」という表現を「おかしくない」と答えた人が、半数を超えていたと言います。
「はなむけ」の本来の意味とは違った解釈をしている人も増えているようですので、注意したいところです。
ちなみに「餞」の言葉は、去って行く人の「健康」「活躍」「幸せ」を願う言葉。また、これまでお世話になったことの「お礼」「感謝」の言葉。そのほか、ご本人の人柄が感じられるエピソードや、心に残る思い出など。ご本人はもちろん、同席する人たちも心が温かくなるようなメッセージがあると場が和みます。
ネットやSNSには、多くの例文がありますが、ありきたりで無難なメッセージになってしまいがちです。より心のこもった餞の言葉を送りたい場合は、プラスαの思い出話などを加えてみましょう。きっと喜ばれることと思います。