「残心」の心得
「残心」とは、余韻を残すこと。または心が途切れないという意味で、武道や芸道で使われる言葉です。
武道では、勝負が決まった瞬間にガッツポーズをしたり、すぐに気を抜くなどはご法度。相手のある勝負ごとにおいては、「勝っても奢らない、負けても卑屈にならない」ことが重要で、さらに、試合う(しあう)相手が存在することに感謝をすることが武道の基本です。
武道では、どんな相手であっても、相手があって初めて技術の向上ができ、相手から学べることがあり、勝ち負けの前にまずは相手を尊重し、思いやるという考え方が大切にされているからです。さらに、勝ったと思って気を抜いた瞬間に、思わぬ反撃にあうこともあるかもしれません。武道では、心を留めないこと=「残心」も修行のひとつです。
この「残心」の心得は、私たちの日常生活でも同様です。
たとえば、電話を切るときに、話を終えた瞬間にガチャッと切るのは「残心」のない行為です。ひと呼吸置いて切れば、言い忘れがないか、お互いに確認することもできますし、耳元でガチャッという音をさせなくても済みます。
お茶出しの際も、「残心」の心得があれば、呼吸と一体となった丁寧な所作でお茶を出すことができ、粗相も少なくなります。
「残心」は、「ひと呼吸作り置く」ことと似ているかもしれません。物事を始める前に、ひと呼吸して息を整える。次の動作に移るときも、いきなり動作に入らない。それは、わずか数秒か、1秒にも満たない時間かもしれません。何事にも、ひと呼吸置いて行動すると、心も所作も整います。
所作だけでなく、会話やコミュニケーションも「残心」。「1秒の余韻を見届ける」という心持ちを習慣にしてみてはいかがでしょうか。