F&Aレポート

攻撃的な物言いは、百害あって一利なし 怒りの感情は人やモノにあたっても解消できず増幅する

攻撃的な物言いは、百害あって一利なし 怒りの感情は人やモノにあたっても解消できず増幅する

 ネット社会と言われるようになって久しいですが、SNS上などで匿名でコメントをできる場がどんどん増えています。

 普段は腰が低く見えるけれど、ネットでは攻撃的な物言いを辞さない、いわゆる「ネット弁慶」というような人も少なくありません。批判する対象が見知らぬ人であれば、なおさら攻撃的になり、それをストレス解消の手段にしている…という人がいるかもしれませんが、これは止めておくべき行動です。「怒りの感情のコントロール」についての研究をご紹介します。(科学的に元気になる方法を集めました 明治大学教授 堀田秀吾著 文響社

東フィンランド大学のネウヴォネンらによる研究で、世間や他人に批判的な物言いをする度合いを測る実験が行われました。この結果「人を信用できない」と考えて、攻撃的な物言いをしている人は、認知症になるリスクが高くなるという結果が得られたそうです。

 日常生活であれ、ネット上であれ、他人をののしるようなことを繰り返していると、自然と「ののしり体質」になっていってしまうのです。

 人格は日常の積み重ねです。表面上をいくら取り繕ったとしても、日頃からの「ののしりグセ」がついていれば、徐々に態度や雰囲気にあらわれるようになっていきます。

 実験では、被験者たちに「怒ったときはパンチング・バッグを殴ると、怒りの解消に効果的」という記事を読ませてそのあと怒らせてみて、どんな行動に出るかを調査しました。

 その結果、パンチング・バッグを殴った被験者はバッグを叩く事を楽しんだものの、怒りの感情はおさまるどころか、怒りの対象の相手、ひいては関係ない人にまで怒りをぶつけるようになったそうです。

 つまり、怒りの行動は、一度でも表現してしまうと広がってしまうということです。

 したがって、イライラしたとき、暴言を吐きたいときは、瞬間的に行動するのではなく、ひと呼吸つきましょう。具体的には、言いたいことを悪い言葉ではなく、少しでも良い言葉に言い換えようと考えてみてください。

 アシュという心理学者による有名な実験ですが、ある人を形容するのに
1 知的な、器用な、勤勉な、温かい、決断力がある、実践的な、注意深い
2 知的な、器用な、勤勉な、冷たい、決断力がある、実践的な、注意深い
 と、2つのパターンで紹介したとき、印象にどれぐらい違いがあるか調べました。すると、後者に対する評価は否定的になりました。

 しかし、見比べると先の紹介で違うのはたった一語だけ、「温かい」と「冷たい」だけです。にも関わらず、後者の評価が否定的なものが多くなったのです。

 たとえば、議論などで反対意見があったとして、それが正当な内容だったとしても、ネガティブな表現、人をののしるようなニュアンスを加えてしまうと、相手の感情をむやみに刺激することになり、話し合いになりません。

 怒りは、生物として原始的な脳の働き「大脳辺縁系」から起きる働きですが、人間はそれをコントロールする「大脳新皮質」が進化しています。つまり人間だからこそ、怒りは抑えられるのです。

 怒りの感情は、少し時間をおけばおさまります。何よりも重要なのは瞬間的に怒らないこと。怒らないという選択肢もあるんだ、怒るかどうかを選ぶことができるんだ、ということを常に頭に入れて、ふーっと、深呼吸などをしてみるのはいかがでしょうか。

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