特集 織田健嗣追悼レポート 2002年6月14日号より
「サービスの品質を維持する11の言葉」
フォーシーズンズホテルの企業風土とコンセプト
一流ホテルの接客サービスといえば、今やリッツカールトンホテルが有名だが、10年前、弊社で企画したのは、フォーシーズンズホテルのバックヤードツアーだった。当時のマーケティング担当支配人に案内されて痛感したのは、サービスのクオリティを守りぬくための地道な努力と、チームワーク、そして「11の言葉」に象徴される企業風土とコンセプトであった。当時、その模様を3回にわたりレポートに特集したが、今でも新鮮であらゆる企業で参考になり得るであろうポイントを追悼レポート最後の号にまとめてみたい。
1.「A SHARED SPIRIT」分かち合う精神
チームで共通のゴールを持ち、常にそのゴールを意識するにはどうしたらいいのか。それは、従業員もアルバイトも、お互いが認め合いコミュニケーションをとりながら仕事を進めていくこと。そして互いにrespectしてやっていくことである。
たとえばフォーシーズンズを船だとすれば、ジェネラル・マネージャーは船長で、部下は一等航海士かもしれない。ハウスキーピングをしている人は船のボイラーを炊いている人間かもしれない。みんなが船長では船は動かない。ラインのスタッフの品質がホテルの品質である。どんなにマネージャーが優秀であっても、お客様に接している人間が一番大事で、それが最高の競争力の源であるという考え方である。
マネージメントはいつも3Pという考え方をしている。「People,Products,Profit」で、このPの順番に意味がある。最初にPeopleがきているのは、最も大切なのが舞台の上で仕事をしているスタッフであるということを示している。このPeopleが素晴らしければ、Productsは当然レベルは高い。品質の高い人間がいれば、利益は上がる。という考え方である。実際のところ経営は、そんなに簡単なものではないことも周知の上だが、スタッフはそれを信じて苦しい闘いを日々続けているという。
2.「Enduring Culture」受け継がれる文化
終始一貫変わらない企業文化を持たないといけない。自分がしてもらって嬉しいことをお客様にする。それは従業員同士も同じ。たとえば、仕事の頼み方一つをとっても相手の身になれば様々である。
実際に1015室に2時半までにチェックインしたいというお客様がいれば、「2時までに掃除をして」と、フロントはハウスキーピングに命令する。しかし、前のお客様が1時半にチェックアウトしたとしたら30分で掃除を終えなければいけない。そうなると通常なら2人一組で掃除をするところを4名でする。ヘルプに入った2人は自分の仕事のペースを乱される。フロント側は「なんで2時までにできないんだ」という。
しかし、現場で4人が必死で仕事をこなしているのを知り、信用していたら、言い方は変わるはずである。当たり前のことであるが、それぞれが同じ気持ちで仕事をしている。フォーシーズンズという最高のホテルを一緒に運営しているという気持ちがあれば、たとえ喧嘩をしても仲直りは早い。また、喧嘩の仕方、しこりの残り方も変わってくるものである。
Common values,common goalsというのは、共通の目標、価値観を持つということ。支配人とスタッフの意見が違っても、目指すところは一緒でないといけない。意見が異なった場合はお互いを認識するために話し合わなければならない。これは、どんなにお客様の要望が変わっても、あるいはデザインの流行りすたりがあっても必ず守り続けていこうとする企業風土と文化である。
3.11のことば
(1)UNCOMPROMISING QUALITY 「妥協しない高品質の維持」 (2)UNDERSTATED ELEGANCE 「控えめで上品なエレガンス」 (3)ATTENTION TO DETAIL 「注意深い気配り・細部へのこだわり」 (4)OUTSTANDING SERVICE 「卓越したサービスの提供」 (5)REFINED LUXURY 「洗練された、贅沢な快適さ」 (6)PERSONAL ATTENTION 「個人的なお世話」 (7)UNFAILING COMFORT 「変わらない快適さ」 (8)ENDURING CULTURE 「受け継がれる文化」 (9)A SHARED SPIRIT 「分かち合う精神」 (10)DEDICATION 「忠実・献身」 (11)ABIDING ETHIC 「忠実に守られる真実」