F&Aレポート

接客日本一を決めるコンテスト~「提案」は「聴くこと」から始まる

接客日本一を決めるコンテスト~「提案」は「聴くこと」から始まる

 接客日本一を決める「SC接客ロールプレイングコンテスト」という大会をご存知でしょうか。全国から勝ち上がってきた接客のプロがステージ上でロープレを披露して、接客力を競うというもの。ロープレ時間はファッションなどの物販部門が6分間、食品、飲食などのサービス部門が5分間。どんなお客様が現れるかは本番までわかりません。

 ちなみにSCとはショッピングセンター(商業施設)の意味です。各ブランドでの選考会、さらにショッピングセンターごとの選考会を勝ち抜いた人が、支部大会に出場し、その上位者のみが全国大会への切符を手にします。

 かなりの緊張を伴うステージで、「ブランドイメージの体現」「表情」「言葉遣い」「提案力」「コミュニケーション力」などを審査されます。出場する選手(販売員)は日頃の接客を見直すことはもちろんですが、ファーストアプローチや、お客様とのコミュニケーションなどをブラッシュアップします。

 この接客訓練をお手伝いしながら、お客様の話を「聴く」ことの難しさを感じます。たとえばお客様が「旅行に履いていく靴を買いに来た」と言われて、「じゃあ、歩きやすい靴がいいですね」と販売員が即座に提案するのは早急です。

 提案の前に「どちらに旅行されますか?」と聴けば、よりイメージや目的に合った提案がしやすくなります。さらに「旅行、いいですね、楽しみですね」など、共感の言葉や表情を見せると、「そうなんです。コロナ禍でなかなか行けなかったので、今回ようやく家族旅行するんです」など、自然に会話が膨らみ、ニーズの情報キャッチができるかもしれません。お客様が、楽しい気持ちで買い物ができれば自然に購買意欲も上がります。

 ただし、お客様は十人十色。絶対そうだとは言い切れないのが、接客の難しさであり、面白さであり、マニュアル化できない部分なのです。このマニュアル化できない部分が経験と知識と、人間力が問われる真の接客力ではないかと思うのです。