ボストーク松山藤原塾

経済政策について少し真面目に考える

皆さん こんにちは

松山も昨日あたりからやっと涼しくなってきました。初秋から一気に晩秋になった感じがします。通勤途中では、ジャケットを着ている方も見かけます。ジャケットの着始めは肩が凝るのですが、いつの間にか慣れてしまうんですね。人間の順応性は素晴らしいです。

本日10月21日女性初の首相が誕生しました。今週は政治、そして経済政策について考えます。

愛媛県とも縁のある方だけに、高市政権の誕生を素直に応援したいのですが、それはそれとして、政策について冷静に考えてみました。新しい政権の経済政策がどのようなものになるのか、ここまで様々なメディアにある情報を参考にしています。

今後の補正予算〜来年度予算の動向については要チェックです。高市氏は頭の回転が速く、ハッキリ楽しくお話しをされる方であることと初の女性総理であることからマスコミも盛り上がっており、新鮮に見える部分もありますが、彼女は従来の自民党体質を生き抜いてこられた方ですから、究極は古い体質の政治家なのだろうと思います。つまり、今までと違う方向に思い切って舵を切るということはまず考えられず、従来の自民党政治の延長線上で政治を考えているように思います。勘違いしないでいただきたいのは、それが良い悪いという判断基準ではありません。が、問題は、日本の景気動向、財政状況に対して、新しい政権がどのように切り込んでいくのか、それをしっかり見ていくことでしょう。男でも、女でも、トランスジェンダーでも、結果としての政策を評価することが大事です。

高市氏の当面の経済対策として取り上げられているのは物価対策です。参院選挙などでは、ガソリン税暫定税率の廃止、消費税減税、給付付税額控除、給付金等々が取り上げられました。昨日署名された自民党と日本維新の会との間の連立政権合意書でも給付金を除外しほぼ同じ内容が書かれています。庶民の生活を支えるという意味で分かりやすい政策です(制度の内容はとても難しいものばかりですが)。

ここから先はちょっと難しいのですが、少し経済学的な視点で考えます。ハッキリ申し上げて、これらの政策はインフレ自体を解決するものではありません。目の前の生活上のしんどさを和らげる効果はあると考えられますが、物価を引き下げる根本的な要因に手をつけていません。なぜなら、減税等により納税者にお金が回ったとしても、物価そのものを引き下げるわけではないので、消費者はインフレで上がった価格の商品を買うことになります。また、減税により財政が圧迫されます。財政状態が厳しくなると、国債を引き受けてもらうために金利を上げる必要があります。日本の金利上昇は円高に振れる側面もありますが、国債引受のための金利上昇は実体経済は改善されず単に国家としての財政が悪化しているので、その不安感から日本不信=円安を引き起こしやすくなります。企業にとっても金利上昇=コスト上昇なので、これもまた物価に反映されます。つまり、減税主体とする政策には物価を下落させる効果はなく、逆にインフレを加速する可能性が高いと言えます。

それなら賃金を引き上げれば良いと言うことになりますが、賃金引き上げもコスト増ですから、同じく物価は上がってしまいます。

現在取り上げられている対策では、一時的な効果は期待できるけれども、中長期的な対策ではないと言えます。

このような政策が歓迎されるのは、私たち日本人の意識が、失われた30年のデフレの感覚から抜け切れていないことも要因だと思います。日本維新の会が主張する身を切る改革というのは、政治家や官僚を減らそうとするものですが、仮にこの政策をコストカットを意味するものと考えれば、デフレ時代の発想です。デフレの時はコストカットをしてわが身を守ることが大切です。しかし、インフレの時代は、守るだけでは経済的価値が下がってしまうので、投資に打って出ることで経済価値を維持する、上昇させることが求められます。

そのためにどのような政策が考えられるか。例えば、投資に打って出ること、AI等に対する技術開発への投資を行うこと、イノベーションを起こすこと、そのような民間の活動を国が起業家の後押しをすることではないでしょうか。日本経済が進化し、時代が変わったと思うような技術開発を行うこと、その結果前向きに生きようと思う人が増えることです。企業の後押しとは、半導体にあったような資本の支援ではなく、後方支援や投資のための環境整備のようなものです。産業と国の距離感は近くなりすぎないようにすることが大切です。その結果、国全体が元気になり、国民の意識が前向きになること、です。最低賃金が上がったから賃金が上がるのではなく、企業の実績が良くなったから賃金が上がるという流れです。自分たちが頑張ったと思える成果が賃上げであれば、モチベーションも上がります。

アベノミクスで採用されたリフレ派の主張と少し似ていますが、リフレ派の主張は、量的緩和や日銀の国債引受、ゼロ金利政策など、金融政策で投資や消費を活性化しようとしたものであり、正面切って実体経済の改革を行おうとしたものではありません。経産省中心にそのような改革もありましたが、火は付きませんでした。

ただ、実体経済を元気にする対策の最大の欠陥は、効果がすぐに出ないこと、庶民の生活がすぐに楽になるわけではないと言うことです。理論的には正しいが、感覚的に正しいかどうか、答えがなかなか分からないと言うことです。

具体的にどのようなことを想定するかですが、例えば、日本で米国のエヌビディアやアップルのような世界を代表する企業が生まれてきたり、世界の先端技術が様々な分野で生まれること、日本独特の技術・コンテンツが生まれること、その余波が一部の企業だけでなくたくさんの中小企業に及ぶことなどなどです。が、本当にできるの?夢物語じゃんと、多分思われますよね。

既存政党に対する不信感が強まり、ポピュリズムと言われる政党のパワーも増している中で、理論的には正しそうだけど、効果が読めない政策を支持する国民がどれだけいるのか?政治家の役割は今まで以上に厳しいものになってきています。

また、政治の体制も今のままで良いのか、変化しなくて良いのかと言うこともあります。

日本における政治(国政)は4年か6年に一度の選挙で選ばれた政治家によって動きます。それを行政に落とすのが終身雇用制の官僚の役割という仕組みです。大半の民主主義国家も同じようなものです。果たしてこれは変化の激しい今の時代に合っているのでしょうか。政治をチェックする機能は4〜6年ごとにしか行われません。一度投票で決まってしまうと数年間修正ができない。また、政治と判断すべき項目を政治家でなければ決められないという制度もそれで良いのか。国民の意思が反映されることが民主主義だと定義すれば、様々な技術革新を経て、新しい民主主義の形が議論されるべきではないでしょうか。この問題はあまりに壮大なテーマなので、時間をかけて考えていきたいと思います。

今週はちょっと難しい話になってしまいました。今は簡単に物事を理解しようとしがちですが、たまにはこんなことも考えてみましょう。政治、経済、財政は私たち自身のことですから。

【今週のAIネタ】
今年1月にロスアンゼルスで大規模な山火事が起きました。その山火事を起こした男が、ChatGPTと火災について事前に話し合っていたことが分かりました。詳細は分かっていませんが、燃える森と逃げる群衆の絵をAIを使って生成したりするなど、山火事がどうなるかをイメージするなどしていたようです。また、罪に問われないためにどうすれば良いかと言うことも相談していたようです。このようにして、犯罪にAIが関わるケースが増えています。AIの利用が広がる中で、AIが引き起こすマイナスの面をどのように克服するか、真剣に考えるときに来ています。

この記事では一般的な経済市場動向についての情報提供を行っているもので、特定の投資を推奨又は勧誘するものではありません。