ボストーク

自民党総裁の決断

9月7日、石破茂首相が自民党総裁を辞任することになりました。世論の支持率は米国の大統領よりも高いのに、やめざるを得なかったということは、所属する自民党の混乱を回避することを最優先したということでしょう。これを受けて自民党はどうするのか、世界中が冷静に見つめています。

今回は自民党総裁としての決断です。自動的に首相の座を降りることにはなりますが、次の首相がどのようになるかというのは国会での判断となり、過半数を持たない自民党だけでは決められません。

石破氏は、記者からの質問を受け止めること、自分の言葉で語ること、政治家とのコミュニケーションで夜の会食を利用しないことといった面で、従来の自民党総裁、首相と異なり、個性的な政治活動だったと思います。また、米国トランプ政権との間で厳しい関税交渉に関わり、不安定ながらも一定の合意を得られたことは、首相としての大きな成果の一つです。

この1年間、大学の後輩として、首相の行動と判断を今までになく主体的に見ることができたのは私にとってとても良い経験でした。主体的というのは、ある政治的な判断に対して、彼がどのような思いでその判断を下したのかと考えていくと、単純に良いか悪いかと決めつけられないということです。これは政治だけでなく、どの世界でも同じだと思います。報道されると、3行に集約されるけれども、その前に何十ページにわたる検討が行われていること、それを合わせて評価することが重要だということです。最終的にはその決断で得られた結果で評価すべきというのは当然ですが、その背景も理解しておくことは、次の政策判断の際に重要な材料になります。面白くもおかしくもないかもしれませんが、国民の生活と命と冨がかかっているのですから、複雑そして難しいものであることは避けられません。

今後、石破さんがどのような政治活動をされるのか不明ですが、今はとにかくお疲れ様でした、と申し上げたいところです。以前のように気軽に三田の居酒屋に寄ることもできるようになるでしょうね。

政治の世界に話を戻すと、これから自民党は政党としての能力が試されます。今までは、「いろいろあっても最後は自民党」という意識が国民の間にもあったと思います。しかし、高齢化の進展で自民党を支えてきた世代は引退しつつあり、そのような意識を持たない若い世代も相対的に増えてきました。

国内外の政治課題は、いまだかつてなく深く不透明です。トランプ政権とは引き続き交渉を行っていくことが必要ですし、ロシア、中国、北朝鮮という国々との関係という外交面もいまだかつてない領域に入っています。残念ながら、第3次世界大戦の可能性という言葉もリアルなものに感じられるようになってきました。今回の辞任により、自民党が従来型の政党を維持するのであれば、国内政治が欧米諸国の多くと同様、ひじょうに不安定な状況に突入したことになると思われます(従来型であるかどうかの判断はあくまでも国民の目で見ての考え方であり、政治家から見たものでは決してありません)。このような状況で日本はどう進んでいくのか。高い見識を持っている政治家が日本にどれだけいるのか。政治を一方的に頼るのではなく、国民の側も今までと違う視点で政治を見つめていくべき時です。

繰り返しになりますが、石破さん、お疲れ様でした!