参院選挙を控えて消費税減税の話が熱を帯びてきました。
共同通信による世論調査によると、基本的に消費税を減税すべきとした回答は73.1%でした。
コメ価格の値上がりに対する政府対応が不十分とするという回答が87.1%にのぼっており、コメがこんなに高いんだから、消費税くらい安くしてほしいと言う国民が思ってるということだと思われます。
さて、消費税を減税すべきかどうか。
財源の問題
減税に反対する根拠としてまず考えられるのは財源の問題です。
食料品に対する消費税は年間5兆円程度と言われています。
この税収のマイナス分をどこから補填するかというのは決して簡単な問題ではありません。
アンケートでも、消費税の減税ないし廃止により将来の社会保障サービスが低下する不安があると回答した人が72.9%となっていました。
消費税を下げたらどうなるかということを、多くの国民は認識しています。
高所得者の問題
高所得者は、低所得者よりも購入する食料品の金額が多いのが一般的です。
低所得者は物価が上がると消費活動を控えるようになりますが、高所得者はそこまで控えることはないと考えられます。
つまり、消費税の減税効果の恩典を受けるのは、低所得者よりも高所得者の可能性が高いということになります。
消費税を減税しても、コメ価格の上昇で生活に打撃を受けている低所得者にはあまり効果はないということになります。
減税の目的
コメ価格が高騰する根拠については、様々な見解があります。
気候変動や高齢化による生産量の減少、インバウンドによる消費量の増加等々が挙げられています。
ここが明確でないまま、どの対策が効果を持つかという議論は難しいのですが、では、消費税を減税してコメ価格は落ち着くのでしょうか。
欧州ではコロナ禍の時期に消費税の一時的な税率引き下げが行われましたが、その効果は明確でないという報道があります。
何でも良いから減税しようというのではなく、様々な角度から検討を行う必要があります。
増税の難しさ
引き下げた税率を、再び上げることは増税になりますから、その時点で強い反発が予想されます。
1年間の減税措置のような期限を設けると、一時的なものとして効果が期待できません。
農林水産事業に対する国としての方向性
税金ではありませんが、日本国内の食糧問題につながる農林水産事業をどうするか。
高齢化する農業従事者への対応や農業安保とされる自給率の問題等も合わせて検討する必要があります。
愛媛県に住んでいると、農業林業水産業は身近な産業です。
そこで感じるのは、この産業は持続可能性が高いとは到底言えないということです。
安定した食料を調達するための仕組み作りなど、消費税よりも先に手をつけるべきことがあるのではないでしょうか。
金利上昇の問題
日本の巨額の財政赤字が大きな問題を引き起こさなかった要因の一つが低金利です。
しかし、2020年を過ぎた頃から上昇傾向にあり、現時点で10年もので1.529%となっています。
今後の物価上昇や国際金融不安から、さらに上昇する可能性があります。
こうなると、歳出面でも国債の金利負担を強く意識しなければなりません。
財政面における減税のマイナス効果は小さくないと思われます。
日経新聞が行ったこの問題に対する経済学者へのアンケートでは、ここに書いたものとほぼ同じ理由から、減税を肯定的には捉えないものが大半でした。
しかし、減税を求める国民の声も無視することはできません。
国民にとって食費の高騰は切実な問題です。
特にコメは日本人にとって欠かせないものだけに、その影響はひじょうに大きいものです。
同時にコメは、行政からのコントロールされてきたものであり、その点もこの機会に検討されるべきです。
ここは政治としてどう考えるか、国民がどう納得するかです。
言われたとおり減税したからそれで良しでしょ、とはいかないはずです。
仮に今回減税を受け入れるのであれば、政策実施後、その結果を正確に検証し、経済的にどのような効果があったのかを明らかにすべきです。
将来的には、減税以外にも経済的弱者のことを考慮して、給付付税額控除やベーシックインカムといった政策を比較検討する必要もあります。
また、教育資金の給付の拡大や医療費の負担減免等も考えられます。
参院選前だけに、冷静にというのは難しいかもしれませんが、勢いだけで政策を決めるのは問題です。
これを機会に、日本の農業政策に対する理解を深め、徹底した検討と議論を行い、国民生活に混乱が生じないような政策が選択されることが望まれます。