ボストーク松山藤原塾

賞与がないっ

皆さん こんにちは

本日5月20日の松山は南から暖かい風が入ってきて、春を通り越して夏でした。
暑かったですね。
まだ5月なのに、この天気について行くのは大変です。

さて、昨日の日経ネット版に、ソニーやバンダイが、冬の賞与を廃止して賞与を年1回とすることになったという記事が出ていました。
従来の賞与分は、月例の給与に振り替えることになります。
日本では常識の賞与制度は、世界から見ると特異なもので、いわゆるガラパゴス人事制度です。
欧米で賞与と言えば、経営陣に対して株式のストックオプションのような形でのもので(これは日本でもあります)、一般社員の賞与はせいぜい1ヵ月程度だそうです。

賞与廃止(低額化)の背景には、日本企業に少しずつ定着しつつあるジョブ型の人事制度があります。
ジョブ型とは、企業が社員の業務内容=ジョブを明確にして、その職務に必要なスキルや経験を持つ人材を雇用するシステムのことを言います。
仕事の内容が明確であり、それに対する報酬も明確なものとなります。
ジョブ型と対比されるのがメンバーシップ型と言われるものです。
こちらは、社員を一斉に採用、社内で教育し、会社の中でその社員の特性を活かすような人事配置を行うシステムであり、終身雇用制度をベースとした日本の会社は、このメンバーシップ型です。
この方法は、国全体が高度成長に向かって効率的に動いていた戦後の日本経済には最適の形だったのかもしれません。

しかし、この就業形態に変化が起きています。
今年3月には、富士通から2025年度から新卒一括採用を廃止するという発表がありました。
一般的な日本の企業は、3月に卒業する学生がほぼ一斉に採用し、入社します。
2024年度、富士通の新卒採用は800名でした。
この採用方式がなくなり、新卒と中途採用の区別なく、通年で企業に必要な人材を適宜採用するこれがジョブ型の人事制度です。

日本人が持っている従来の職業観では、3月に学校を卒業、4月に会社に入り、数ヶ月〜1年程度の研修を経て、配属先が決まりそこで先輩からの指導を受けながら仕事を覚えていきます。
歓迎コンパ、花見、新年会、送別会とお酒の席はとても大事でした。
しかし、ジョブ型の会社が増えてくると、会社が研修を用意するような制度はありません。
学生時代からインターンシップとして企業に入り業務を体験しながら、必要な技能を自分で考えて身につけていくことになります。
能力的には未熟な面があるとしても、ほぼ即戦力としての扱いであり、そのまま現場で経験を積んでいくということになります。
入るタイミングは、会社と学生それぞれのタイミングで決めます。
欧米の例で言えば、卒業後数ヶ月かけて入社していくようです。
ChatGPTによると、公務員も同じように年数回チャレンジできるようになっているようです。

ジョブ型が普及するとどうなるのかということを考えてみました。
新卒一斉採用がなくなるので、学校の入学式になんとなく似ている入社式はなくなります。
入るタイミングがバラバラなので同期という意識はなくなるでしょう。
同期の意識も薄くなるので、先輩後輩という序列意識もなくなると思われます。
自分が担当する業務は明確ですから、その業務がなくなれば配置転換ではなく、転職することになります。
幅を拡げたり、方向転換したいとき、会社は手助けしてくれないので自らステップアップするしかありません。
終身雇用から、転職が原則の社会です。
日本でもIT系のエンジニアはこのような働き方をすることが一般的です。
年次による序列の意識が強い公務員はどうなるのでしょうか。
定年がどうなるか?ですが、定年で一斉退社もなくなり、それぞれが辞め時を判断することになります。
「お仕事は何ですか?」と聞かれて、「○○に勤めています」といった社名で答える、つまり仕事を会社で判断する日本的な意識も変化も変化していくと思います。

しかし、ジョブ型はすべてにわたりメンバーシップ型より優れているわけではありません。
同志社大学の太田肇名誉教授ような「自営型」を提唱されてる方もいます。
「『自営型』で働く時代ージョブ型雇用はもう古い!」(プレジデント社)
これは従業員が自営業者のように自立した形での仕事を目指そうとする働き方です。

どのような形を取るにしても、今の日本に必要なのは、世界に遅れている技術力・競争力を取り戻すこと、生産性の向上、先端技術の育成と活用、そしてなにより新しいものに取り組んでいこうという気力・活力です。
大手企業が思い切った改革に取り組んでいる背景には、そのような強い危機感があります。
中小企業にもその意識が浸透していくことも求められます。
官僚機構にもいずれこの変化が及んでくると思われます。

実は私は自らの立場での入社式の経験がなく、社会人としての同期もいません。
カッコ良く言えば、ずっとジョブ型の世界で生きてきました。
正確には、雇用契約ではなく委任契約の世界ですが、実力の世界、自分で判断する世界という意味では、ジョブ型的です。
ということは、そんなに難しく考えなくても良いのかなとも思います。