皆さん こんにちは
今日4月8日は松山市内の小中学校の入学式でした。
例年だと散ってしまっている桜ですが、今年はしっかり残っていて、町で見かける新入生がとてもさわやかでした。
さて、税理士をしていると、関税に触れることは少なくありません。
輸入物品については、税関に対して関税と日本の消費税を支払うことが求められます。
これがないと物品を引き取ることができません。
また、支払った関税は、商品代に加算されます。
この関税について、先週トランプ大統領が表明した宣言が世界中を揺るがす大問題になっています。
その影響で、先週末から世界中の株価が大きく下落しました。
世界大恐慌の到来のように言われ、テレビのニュースを見ると、株価のことばかり取り上げられていました。
しかし、今回の関税の問題と株価は直接関係ありません。
関税の問題を考えるために、歴史を振り返ってみます。
1929年NYから発信した世界恐慌
1930年米国内の産業と守るために高関税をかけるスムート=ホーレー法の成立=保護貿易体制
英国、フランス等が続きブロック経済化と世界貿易の縮小
1939年英仏とドイツの間で第2次世界大戦〜1941年太平洋戦争
(時間差で経済的な動き)
1934年米国 互恵通商法による保護主義からの転換
1941年ルーズベルトとチャーチルによる英米首脳共同宣言 自由貿易による平和の理念
1944年ブレトンウッズ会議〜
世界恐慌後、高関税によるブロック経済体制が植民地を持つ国を中心に世界に拡がり、植民地を持たなかったドイツ、イタリア、日本がこれに対抗する形で第二次世界大戦が勃発しました。
日本側から見ると、1941年米国による石油の禁輸が実施され、反発する日本軍は南進政策を打ち立て、真珠湾攻撃へと突き進んでいきます。
もっとも、南進政策の実態は戦略的なものではなく、石油を採掘し日本に運ぶことを現実的に想定したものではなかったと言われています。
つまり、バブルによる世界恐慌と保護貿易の拡大は、間接的にはつながりがありますが、視点が別だということです。
そして、悲惨な戦争の結果を反省し、ブレトンウッズ体制という自由貿易体制が構築されました。
そこでは、国際収支黒字国であった米国を中心に、自由で無差別な国際経済秩序の構築が進められます。
通貨の仕組みとして、基軸通貨となるドルだけが金との交換比率を固定し、各国の通貨はドルとレートを固定する金ドル本位制というものです。
その後、1971年ニクソン大統領は、金とドルの交換停止を突然発表します。
少しの時間差で、固定為替相場制度から変動相場制に移行します。
これがニクソンショックと言われるものです。
「ブレトンウッズ体制の終焉」ジェフリー・E・ガーデン作に詳しく書かれています。
背景には、当時の西ドイツや日本の経済復興、そして米国の経済構造の変化、国際収支の赤字があります。
つまり、当時の米国は今の米国につながるものをすでに持っていたと言えます。
しかし、その後も基軸通貨としてのドルは維持され現在に至ります。
先日のトランプ大統領の関税宣言をはじめとする米国第一主義による政策は、基軸通貨としてのドルを放棄するものと捉えられています(トランプ大統領と政府の閣僚は、発言の背景や趣旨を説明しないので、そのように考えるしかありません)。
戦後構築された自由貿易体制の崩壊(破壊?)、精一杯よく言えば新たな貿易体制の構築です。
関税の話に戻ります。
つまり、関税は商品代の一部となりますから、仕入価格が上昇した部分は最終的に消費者が負担することになります。
エール大学の試算によると、今回の関税政策による米国民一人あたりの負担は4000ドル(約59万円)になるそうです。
問題は、株価ではなくこちらの方です。
物価が上昇すればインフレとなり、それをきっかけに買い控えが起きれば、企業の収益も上がりません。
景気の悪化=不況になります。
すでに米国では主要な産業の中で人員削減の報道も出ていますが、失業率が悪化する可能性もあります。
ここまで来ると恐慌に到る可能性が出てきます。
問題は、株価ではなく実体経済への影響、景気の動向です。
大きく下げた株も、今日8日は少し持ち直したりしています。
株価を見ているだけでは、このような経済の動きまでは把握できません。
歴史的な視点も重要です。
日本のテレビ局が問題の本質を理解していないなと思ったのはここです。
ブレトンウッズ体制の構築に当たっては、米国と英国が対立しました。
英国の主張は、世界中央銀行のような機関を創設し、国際通貨を導入するというものでした。
もしこのような仕組みになっていれば、米国経済も今とは違ったものになっていたでしょう。
また、米国中心の仕組みができあがったということは、戦後経済の中で米国の得た利益は決して小さいものではなかったと考えられます。
残念ながら、トランプ大統領の演説はブレトンウッズ体制にはまったく触れていません。
いずれにしても、世界が大きく揺れ動くのはこれからです。
戦後構築された自由主義経済圏がこれからどうなるのか、崩壊していくのか、形を変えて維持されるのか。
これから何が起きるか分かりませんし、どの道に進んでも様々な問題が発生するでしょう。
関税を巡る日米の交渉も始まりました。
毎週書いていますが、日本として生きる道を真剣に考えるときです。
あまりに壮大なテーマですので、また機会を見てこの続きを書きたいと思います。
こんな風に、歴史と経済を勉強するとは思ってもいませんでした。
これはドナルド・ジョン・トランプのおかげです。
2月13日開催の松山藤原塾。
アーカイブでの受講はまだ受け付けておりますので、ご希望があればお知らせ下さい。