ボストーク

湊町レター Letter From Minato-machi 2024(令和6)年8月1日 No.157

 8月に突入しました。今年の梅雨は、松山市⺠にとって忘れられない年となりました。お城山の土石流被害は大変ショッキングな出来事でした。梅雨末期を迎えている東北地方も大変のようです。しとしと雨の季節が雷とともに終わり、蝉の声に気が付いて梅雨明け〜夏休みという風情のある季節の変化はもう見られないのでしょうか。

 先月書いた新紙幣発行の話の続きです。1万円札の顔が福澤諭吉から渋沢栄一に、5000円札は樋口一葉から津田梅子、1000円札は野口英世から北里柴三郎に切り替わりました。この3人と福澤諭吉のつながりについて調べました。渋沢栄一は、論語に対する見解を巡って福澤と対立していましたが、日清戦争の出征兵士の家族への支援を巡って文筆家・教育家=福澤、実業家=渋沢それぞれの立場で協力し合ったそうです。また、津田梅子は、福澤が2度目の米国訪問時に梅子の父、仙が通訳として随行し、福澤も梅子も⻄洋文化を学びながら日本の教育に力を注ぎました。北里柴三郎は慶應義塾大学医学部の創設に尽力し、初代の医学部⻑(当時は医学科の学科⻑)に就任しました(北里大学は、柴三郎が創立した北里研究所をベースに作られた大学で、設立時点で彼は亡くなっています)。このように、新しい紙幣の3人は福澤と同じく、ともに日本近代化を進めていった人たちだということです。

 この紙幣を刷新する目的は、偽札防止技術の更新と言われるところですが、実は、マネーロンダリング(資金洗浄)を防止することも目的もあります。犯罪収益移転防止法という法律があり、200万円を超える現金の受払は本人確認が必要です。これは旧札を新札に交換する場合も適用されます。犯罪などで作られた現金がこの手続を経て、関係者の身元をハッキリさせることができます。なお、相続税逃れのためのタンス預金も同じです。ただ、新札が出てきても、旧札は利用可能ですから、慌てて交換する必要はありません。

 そのお金に絡むニュースです。日銀は、7月31日、金融政策決定会合で追加利上げを決めました。0〜0.1%としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を8月1日から0.25%に引上げ、国債買い入れ額を月6兆円程度から来年1〜3月には3兆円に引き下げます。難しい金融用語が続きましたが、日銀は、物価上昇が続いているので、金利を引き上げるということです。その結果、7月末のドル円は大きく円高に振れています。円安に⻭止めがかかるのは悪いことではありませんが、金利上昇は住宅ローンや事業資金の借入れにも影響します。物価上昇の割に賃金が上がっていない中での金利引き上げが実体経済にどんな影響があるのか、注意が必要です。今回の対応は、中央銀行としては致し方ないと私は思います。今までのゼロ金利政策は異常事態であり、継続することは望ましくないからです。実体経済への対応については、日銀だけでなく政府も一体となって対応すべき課題と考えるべきでしょう。経営上の判断も今までになく複雑なものとなります。大変難しい夏休みの宿題です。

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