新しい年2025年を迎えました。皆さまはどのような新年をお迎えでしょうか。今年の正月は、昨年に比べると大きな災害や事故もなく、天候にも恵まれ、落ち着いて迎えることができました。しかし、米国や韓国では混乱が続いており、予断を許さない状況です。
さて、新しい年を迎えて改めてこれからの日本社会が進むべき道について考えました。実は別のテーマについてほぼ書き終えていたのですが、1月3日、日鉄がUSスチールを買収する問題について、バイデン大統領が買収阻止の決断をしました。非常に重要な問題なので、急遽このテーマに切り替えることとしました。
このニュースで、かつて日本がNYのロックフェラービルを買い取るということで米国が大騒ぎになったことを思い出す方も多いと思います。正確にはビルを買い取ったのではなく、ビルを所有するロックフェラーグループ(RFG)の株式の51%を買い取りました。バブルの絶頂期1989年のことです。しかし、米国の世論は米国の象徴であるロックフェラービルを買い取ったというイメージで日本たたきが始まったのです。これ以外にも、日本と米国の間には、日米貿易摩擦や米国の巨額赤字の問題もあり、当時の日本経済が絶頂期を迎えて米国が大変神経質になっていたということもあります。
当時と比べると、今の世界経済は中国の台頭やインドなどの新興国の競争力が高まったことにより一層複雑化しています。そして、ハイテク企業を除く米国経済の劣化は止まっていません。トランプ大統領が復活した背景には、米国が劣化を止められず、国⺠の多くがその影響を受けているということがあります。そのような視点で今回の買収劇を見直すと、USスチールは日鉄の支援を受けることにより、資金面と技術面で競争力を回復するきっかけをつかみ、中国や新興国に対峙することができたと考えられ、経済合理性からは買収の判断は正しいのかもしれません。しかし、買収される米国側の状況には大きな変化がなく、「政治的な判断」で買収拒否という形で答えを出すのは、これはこれで仕方ないところでしょう。今後については形を変えた買収の可能性も残されており、推移を冷静に見ていく必要があります。
ところで、その後の三菱地所ですが、RFGが1996年に破綻することで巨額の損失を蒙りました。しかし、現在もなお米国での不動産投資を続けており、2024年3月期の連結決算では売上高1兆5,046億円、当期純利益1,684億円を計上しました。三菱地所に限らず日本企業による米国投資は続いています。表面的で感情的な報道に踊らされることなく、正確な情報を入手すること、そして粘り強く経営することが大切ということです。
2025年が皆さまにとって希望に満ちた一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。