ボストーク

湊町レター Letter From Minato-machi 2016年9月1日 №63

 9月です。今年は、36度を超える酷暑が続いたと思っていたら、お盆過ぎから急に気温が下がり始めました。その頃から台風の発生が続き、日本列島南をUターンする前代未聞の台風まで発生しました。この季節は、夏の暑さに疲れ切った身体が、気温の変化に身体がついていかず、体調を壊しやすくなります。いわゆる夏バテです。秋から冬に向かう前に、早めに体調を整えておきましょう。

 さて、その秋ですが、人事について、大きな改正が行われます。最低賃金引き上げと社会保険加入枠の拡大(この2点は10月から実施されます)、そして所得税の配偶者控除の見直しの3点です。

 最低賃金の見直しとは、安倍政権のニッポン一億総活躍プランに最低賃金を毎年3%程度引き上げる方針に基づくもので、愛媛県の場合、時給20円引き上げられて、717円となります。1日8時間、週40時間として月給を計算すると、3,360円の上昇となります。現在の日本の定期昇給を見ると、私の感覚では、この引き上げは大変高額なものです。確かに、給料が上がるのは働く人にとっては良いことです。法律上守らなければいけない最低賃金であるため、この近辺で給与を支給している会社は給与水準を引き上げざるを得ないと言うことになります。しかし、最低賃金という制度を利用してある意味、無理矢理給料を上げることが、日本経済にとってプラスになるのでしょうか。

 一億総活躍プランの目指すものは、働く人の給料を上げて、生活水準を改善し、消費活動を活発にしようというものだと思います。その目指す方向は、決して悪いものではありません。しかし、なぜ日本の給料は上がらなかったのでしょうか。見方を変えれば、なぜ高度成長期の給料は上がっていったのでしょうか。ここが問題です。

 高度成長期においては、日本経済は拡張を続け、パイはどんどん大きくなり、多くの会社では増収増益を続けました。その中で、インフレの問題もありましたが、給料は上がり続けました。しかし、バブル崩壊後の日本経済は逆回転を始め、デフレ経済に突入、売上が減った結果、給料は上がらず、賞与も減額、退職金すら覚束ないものとなってしまいました。働いている会社が残っているだけ儲けものみたいな時代です。そのような経済環境で、最低賃金が引き上げられると、会社はどのような対応をとるか。単価が減るのであれば、数量(時間)を減らすことで全体のコストを削減するしかありません。すでに製造現場や事務の仕事では、この20年近くの間、かなりの省力化を進めています。今後は、AI(人工知能)の発達によるコンピューターの利用をさらに進め、人の配置を減らしていくことになると想像されます。これは最低賃金によらないでも進むかもしれませんが、今回の方針は、やや一方的で単純な措置のような気がします。