F&Aレポート

翻訳できない世界のことば 〜An Illustrated Compendium of Untranslatable Words from Around the World〜

 たとえば、広島弁の「たいぎい」は、標準語で表現するとどんな言葉になるのでしょうか。時代劇でお殿様がよく使う「大義であった」の「たいぎ」とは違います(ちなみに「大義であった」とは、人の苦労をねぎらう言葉です)広島弁「たいぎい」は、標準語に訳すと「だるい」「面倒くさい」「気が向かない」などになろうかと思いますが、いずれも十分ではありません。

 方言には、標準語では「十分ではない」=表現できないニュアンスが含まれています。そこに、その土地特有の考え方や価値観、文化、歴史があるのだと、ある家元から聞いたことがあります。方言を理解することはその土地を理解することにつながるのです。

 ことほど左様に、国ごとの言葉を見ても、その地域特有のあり方が現れています。他国を理解することは、自分の国を理解し、互いを大切にすることにもつながります。

 美しい絵本に出会いました。ひとことでは訳せない世界のユニークな単語をご紹介します。(「翻訳できない世界のことば」エラ・フランシス・サンダース著 前田まゆみ訳

イタリア語 動詞 COMMUOVERE「コンムオーペレ」

 涙ぐむような物語に触れたとき、感動して胸が熱くなる!
 本を読んだり、映画を見たりして、涙が流れ落ちたり、何回も思い出しては泣いたりという状態です。感動的で力強い物語は、言葉にできないほど、予想を超えて、あまりにも人間らしく、心を打つものです。

アラビア語 名詞 「サマル」

(アラビア語の文字表記ができず、申し訳ありません)
 日が暮れたあと、遅くまで夜更かしして、友達と楽しく過ごすこと。
 夕方がいつのまにか夜に変わり、暖炉の火が残り火になったとき。特に大した話もしていないけれど、人生の意味について考えたり、ちょっと飲みすぎて、翌朝何をするつもりだったか忘れたりするときのこと。単なる「飲み会」とはちょっと違うようです。

マレー語 名詞 pisang zapra「ピサンザプラ」

 バナナを食べるときの所要時間。
 これは人によって、バナナによってもちがいます。ただ、一般にはだいたい2分ぐらいとされています。マレー民話では、人喰い鬼は、昼間はバナナの木に隠れているそうです。

日本語 名詞 KOMOREBI「コモレビ」

 木々の隙間から射す光。木漏れ日。
 まばゆくて目を閉じてしまうほど美しいもの。緑の葉の間をすりぬけた光は、魔法のように心を揺さぶるでしょう。冬から春に移る頃の木漏れ日は一段と眩く、優しく感じます。

ズールー語 名詞 ubuntu「ウブントゥ」

 本来は、「あなたの中に私は私の価値を見出し、私の中にあなたはあなたの価値を見出す」という意味で、「人のやさしさ」を表す。
 南アフリカのこの重要な哲学は、いろいろに解釈されていますが、ubuntuを知っている人なら、私たち人間は目に見えない形で必ずつながっていることを認めるでしょう。リベリアの平和活動家の言葉を借りると「私たちみんながそうである者として、私もある」。

スウェーデン語 名詞 resfeber「レースフェーベル」

 直訳すると「龍のえさ」。夫が悪い振る舞いを妻に許してもらうために贈るプレゼント。
 火を吐く龍は、そうやすやすと手なづけられません。夫が3時間遅れて帰宅したり、バスケットの試合を見ていて大切な記念日を忘れたり。妻はプレゼントでごまかされるべきではないけれど、やっぱり許してしまうものです。

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