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湊町レター Letter From Minato-machi 2024(令和6)年3月1日 No.152

 今年も早いもので3月弥生となりました。能登半島地震により、金沢国税局管内の石川県と富山県は、国税に関する申告・納付の期限が延⻑されています。この原稿を書いている時点では、延⻑後の期限さえ決まっていません。他の地域では、3月15日の所得税等の確定申告時期を迎えてザワザワしている時期です。しかし、水や電気といった生活の基盤すらままならない状態では、確定申告など後回しとせざるを得ないところでしょう。確定申告は楽しい作業ではありませんが、普通に申告できる日が早く来ることを祈るばかりです。

 さて、今月は「税金について説明するのは難しい」という話です。

 昨年から、インボイスや電帳法について、お客様との間で打合せする機会が今までになく数多くありました。そして、この確定申告の時期は、毎日たくさんの方に計算結果を説明しています。お客様によって多少異なりますが、今年の納税額、引落の日、去年との比較、注意してほしい点、来期の予測等々。そこでふと思ったこと。税理士の側にとって、税金の仕組みを理解し、それに基づいて検討し、計算するのは当然として、結果を聞くお客様にはそこまでの知識はまずありません。それを念頭に私たちはどこまで説明し、分かっていただければ良いのか。仕組みへの理解だけでなく、どの専門分野でも同じようなことはありますが、税金に関することは、その方にとって自分の生き方につながるという側面があります。

 例えば、贈与税に関して、1年で110万円の基礎控除がある暦年課税があり、直系尊属であれば2500万円の控除がある相続時精算課税制度があります。事業をしていれば、相続税贈与税が免除される事業承継税制もあります。遺産分割協議を念頭におけば、遺言や遺留分といった⺠法の取扱も理解する必要があります。その中でどの制度をどのように選択するか?

 計算自体は、会計や申告もソフトがあり、手書きより簡単です。解説もYouTube上ではたくさんの税理士のチャンネルがあります。しかし、それらは一方的であり、こちらの状況を踏まえて細かく丁寧に対応してくれるわけではありません。税務署に相談するとしても、最近は、電子申告の普及もあるせいか、対面での相談機能が以前より制限されてきていますし、財産分けや遺言のような極めて個人的な分野の相談には乗ってもらえるはずがありません。

 税理士としての仕事は、代理人として税金を計算し申告するだけではなく、その背景やリスクを理解して説明すること、そしてお客様とちゃんと向き合うこと。あふれる大量の申告データの向こうには、大切なお客様がいると感じながら、今夜も残業、です。

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