ボストーク

湊町レター Letter From Minato-machi 2014年5月1日 №35

 5月になりました。今年のGWは、前半と後半に分かれて飛び石連休的な面があり、遠出するのは難しそうですが、連休が明けるとすぐに梅雨入りです。今は、気温も湿度もちょうど良い時期ですから、しっかり身体を休めたいところです。

 さて、先月に引き続き経常収支のお話をしたいところですが、その前にちょっと難しい政治の話を。4月29日、米プロバスケットボールのNBAは、人種差別発言があったとして、ロサンゼルス・クリッパーズのオーナー、ドナルド・スターリング氏を永久追放処分とし、NBA最高額の罰金250万ドル(約2億6千万円)を科したと発表しました。日本の新聞では、写真もなく淡々と報道されていたようですが、米国の新聞では大々的に取り上げられていました。その理由は、永久追放という非常に重たい処分であること、そして巨額の罰金。加えて、米国におけるバスケットボールの注目度というのもあると思います。日本では、サッカーや野球に比べると、バスケットボールの人気は決して高いとは言えず、したがってマスコミも大きく報道しなかったのかもしれません。

 しかし、この問題は、スポーツという視点ではなく、思想という面で、日米の違いを読み取る大変重要なケースではないかと思います。

 米国では、人種差別はあってはいけないことです。したがって、今回のようなケースは非常に厳しく罰せられます。しかし、日本人が海外に行って、人種差別的な空気を感じることが全くないか?というと、逆に決してそうではないと思います。個人的な経験ですが、白人ばかりの客で埋まったハワイのレストランに入ったときの私たちに対する視線、ロンドンのグリニッジでビールを飲んでるときに若い女性達からかけられた「Are you Chinese, or Japanese?」という問いかけ。同じ欧米でも、ドイツやスペインのようにそうでない国もありますが、個人旅行をすると、個人の中に、差別という意識は必ず存在すると感じることがあります。しかし、公には人種による差別は決して認められません。

 この現実としての区別が大変重要なのです。日本人の感性で考えれば、公式に認められないものは、たとえ個人であっても認められない、それは二枚舌だという反応になるかもしれませんが、世界ではそれは通用しないのです。

 最近、日本国内では、諸外国からの指摘に対して、ある意味、感情的に反発してしまう機会が増えていますが、問題は、それが事実であるかどうかではありません。それが、「正義(justice)」に反するかです。日本人のある種「素直な」感性は、国際的には通用していないのだと思うのです。

 世界は本当にタフです。日本人はそのことを肌で理解すべきだと思います。