「イヌも歩けば棒に当たる」「論より証拠」などの「いろはかるた」。子供の頃、何度も繰り返して遊んだ記憶があります。当時は、意味のわからないものもありましたが、リズムが良く、短い言葉で物事を言い当てている感じが好きで、何十年も経った今でも頭にも、心にも残っています。
そう、「ことわざ」は百を語るよりも一言で心に刺さるのです。たとえ、その時にピンとこなくても、あとからジワジワ効いてくることもあります。「親父の小言と冷酒はあとで効く」です。
チームの指導や育成、挨拶や会議、ミーティング、プレゼンなどでも上手に使えば、もっと面白く、効果的に伝えることができるようになるかもしれません。今回は、私が講座や研修などでよく活用する「ことわざ8選」をご紹介します。
1、「足元を見られる」
「弱味につけこまれる」という意味。私は身だしなみで、「靴を磨くことの大切さ」を伝える際に、このことわざを紹介します。よく耳にすることわざだと思いますが、意外にも新卒や若い人たちは「意味を知らない」「聞いたことがない」という人が大半です。
ことわざの発端は、江戸時代の駕籠かきが、「旅人の足元を見て値段をふっかけた」ところからきていると言われています。靴(足先)まで気を抜かないよう整える人は、仕事にもソツがなく、準備ができている人とも言えます。
2、「身だしなみは一番外側にある中身である」
これは稲盛和夫氏の名言です。稲盛氏は製造業で「素晴らしい製品は、見た目も美しい(性能が良くても見た目が汚いのは、製品として完成していない)。外側と内側との境はないのだ」「人間も同じで、仕事に対して誠実に真摯に向き合っていれば、それは自ずと身だしなみにも表れるものなのだ」と、説いたと著書にありました。「服装の乱れは心の乱れ」と同様の意味になります。
3、「笑う門に福来たる」
笑顔の重要性を説く際に紹介します。「幸せだから笑う」のではなく、「笑っているから幸福が来る」のだと。先に「笑う」ことが大事。常に口角を上げて笑う習慣をつければ、口角に直接繋がる脳の「前頭葉」が刺激されて、前向き思考にもなると言われています。
4、「群盲象を語る」
インドの寓話。王様が盲人を集めて象の一部だけを触らせ、それは何かを言い当てさせました。盲人はそれぞれ「これは扇(耳)です」「柱(足)です」「綱(鼻)です」など、言い張って意見が対立してしまいました。異なる意見を受け入れないと真実から遠のくということ。私たち自身が盲人になっているのではないかという戒め。チームビルディングやコミュニケーション講座で紹介することが多いことわざです。
5、「枯れ木も山のにぎわい」
「つまらないものでも、あった方がマシ」という意味なので、自らへりくだって「枯れ木も山のにぎわいですから…」と、言うのはアリですが、他者に向かって「枯れ木も山のにぎわいなので、是非お越しください」なんて言うのは、失礼きわまりないことなのでマナーとしても注意したいですね。
6、「藁にもすがる思い」
「色々お願いしてもダメだったので、藁にもすがる思いでこちらに参りました」とは、気持ちはわかるが、「あなたは藁です」と言っていることになるので注意。「これをお願いできるのは、あなたしかいない」と、伝えた方が良い結果になるのではないでしょうか。
7、「行動は言葉よりも雄弁」
行動することに価値があるということを伝えたいときに表現します。研修後、立派なレポートを提出する受講生に一言。同様に「いつやるの?今でしょ」。
8、「最善の努力をし、最悪の事態を覚悟し、結果を待つ」
ビジネスだけでなく、すべてのことに通じることわざですが、クレーム対応の際にも管理や心構えとして。往往にして、結果はマネジメントできるものではないのですが、準備や、その過程はマネジメントできるため、そこに集中しよう!という話になります。