早いもので2023年も4ヵ月が過ぎ去り、5月「皐月(さつき)」となりました。皐月の語源は、田植えが始まる季節であることから、早苗を植える「早苗月(さなえつき)」が省略されて「さつき」となった説が有力です。今使われている「皐月」の「皐」には、沢、湿地、水ぎわという意味があり、田んぼにつながります。
今月は、久しぶりに税金について考えます。
今年4月12日に開催された第16回新しい資本主義実現会議で退職所得課税について議論がされました(この時の議題は「三位一体の労働市場改革の方向性」です)。会議で出された具体的な方向性は、会議後の岸田首相談話にある「労働移動の円滑化を阻害しているとの指摘のある、退職所得課税制度について見直しを行う」ことです。今の退職金課税は勤続年数によって控除額が設定されていて、20年以下は1年あたり40万円、20年を超えると同70万円引かれた後の1/2が課税対象となります。今回の議論では、この控除額を引き下げる=増税しようというもので、過去の税制改正の議論の中で何度も出てきています。
退職金について考える前に、「新しい資本主義」というネーミングには以前から疑問がありました。首相官邸HPによると、人への投資、科学技術への対応、DXやスタートアップといった民の活力活用という3つの視点が新しい資本主義だそうですが、これは別に新しいものではなく、世の中の変化に対応して考えるべき政府としては当然のテーマであり、資本主義の「新しい」考え方のような表現はちょっと違うかなと思います。
それはともかく、この退職金課税の問題について。現在の退職金は長く勤めると控除額が大きくなる=税金が少なくなるので、今の会社に長くいなければと思う人が実際にどれだけいるのでしょうか。私が見る限り、会議の資料の中にはそれを裏付けるものは見当たりませんでした(「阻害しているとの指摘がある」とは書かれています)。企業が副業を認めたり、育休制度の普及、キャリアアップのために職場を柔軟に変えるといった労働環境の変化は、日本経済の活性化のために大変重要なことであり、その目的は理解します。しかし、退職金課税の問題はそこに関連する極めて重要な問題なのか?別の視点で考えると、この議論では、長く勤めることは良いことではないという発想がありますが、少子高齢化の中で、絶対的に足りない雇用を確保することと、年金への不安から、高齢者でも今の仕事を続けなければいけないという実体もあります。また、働き方だけの問題ではないのですが、特に若い人たちが元気に働こうと感じる「空気」が今の日本にあるか?ということです。これは少子化にもつながる問題です。頑張っても仕方がない、諦め感が広く深く漂っていて、国としては、それが何かを突き詰め、解決していくことが優先されるべきではないでしょうか。
ちなみに、気になる退職所得課税の改正ですが、現在の勤務年数による区分をやめて、一律にしようというのが某省の方針のようです。ハッキリと書かれてはいませんが。