桜の季節、卯月になりました。最近の桜は東京で最初に開花することが多くなってきましたが、このレターが届く頃には少しずつ葉桜になってきているかもしれません。恒例の和風月名ですが、4月は「卯月(うづき)」。卯月の由来は、卯の花が咲く頃とだからというのが有力のようなのですが、卯月に咲くから卯の花なのだという説もあり、稲を植えるという意味の「植月(うづき)」という何となく説得力があるような説もあります。
ちなみに、愛媛県には西予市宇和町に卯之町という町と駅があります。この卯之町の由来は、戦国時代に西園寺氏が拠点とした松葉城の城下町「松葉町」が起源とされ、江戸時代に記された文献によると、当時、松葉町は度々火災に見舞われていたところ、今から400年近く前の「卯年」の慶安4(1651)年に町を移転したことをきっかけに、名前を「卯之町」に改めたといわれています。宇和町ではレンゲが有名ですが、「卯」という言葉はホッコリさせられます。
桜といい、この「卯」の語感といい、春いっぱいの穏やかな感じですが、金融マーケットは大変なことになっています。3月10日にスタートアップ企業に多く投資してきたシリコンバレー銀行(SVB)が破綻。続いて、仮想通貨業界に積極的に関わってきたシグニチャー・バンクも破綻し、さらにスイスに飛び火して、クレディスイスが経営危機に陥りました。
どの銀行も救済措置が取られており、現時点では、だいぶ落ち着いてきたともいわれていますが、3行とも決して小さい銀行ではなく(SVBは日本の地銀で一番大きい横浜銀行よりも預金量が多い)、銀行が持つ背景も異なっています。ネットの情報を見てもこのまま落ち着くと確信できる状態ではないようです。
なぜこのような事態に陥ったのか。それは何度か書いてきた金利の問題が大きいのです。銀行の本来の仕事は、預金者からお金を預かって運用すること(預金者→銀行→投資)です。運用する利益が、預金で支払う利子よりも大きければ(投資益>預金利子)利益になります。
今回のSVBは、その資金の多くを米国債に投資していました。世界で最も安全と言われる米国債に投資することがなぜ危ないのか?国債を持ち続ける限り、それが紙くずになる可能性は低く、そのような意味では安全です。しかし、米国ではインフレにより金利が短期間で上昇し、ゼロ%付近だったものが5%近くまで上がってしまいました。その結果、従来から保有していた国債の価値は3割近く減少したと言われています。それでも、そのまま保有することができれば損失が表面化しないのですが、預金者の払戻しが膨らむと手元資金がなくなり、投資した資産を換金せざるを得なくなる=損失が表面化してしまうわけです。銀行はじめ金融業界の基盤は信用力ですから、信頼がなくなると仕事にならなくなってしまいます。
「本当にそんなことが起きるのだろうか?」ということが、起きてしまったのが今回の事件と言えます。引き続き金利には要注意です。
このレポートは特定の金融商品の情報提供を目的としたものではありません。投資は各自の責任で行ってください。