ベビーカーのマナーを論ずる前に…
バスや電車といった公共の乗り物の中でベビーカーを畳むか、畳まないかという論争を時折見かけます。私はその論争を目にするたびに、かれこれ10年前の自身の苦い体験を思い出します。
それは出張で早朝の新幹線に乗ったときのこと。私は早々に自分の席(指定席)に座ることができたのですが、ビジネスアワーだったこともあり車内は席にたどりつけない人が多く、通路は立ち往生していました。そんな中ふと見ると、その列の中に、ベビーカーを押して立ったままのお母さんがいたのです。ベビーカーが完全に通路を塞いでいで、他の乗客は前にも後ろにも動けなくなっていました。私は咄嗟に、「こんな混合う時間帯でベビーカーを畳まないで乗るなんて非常識」と思いました。
しかし、私の隣りに座っていた黒いパンツスーツを着た40代ぐらいの女性がサッと立ち上がり、列を分けてそのお母さんに歩み寄り声をかけました。「これ、どうやって畳んだらいいんですか?子どもを連れて先に席に座ってください。ベビーカー、あとで席に届けます」と。その女性の勇気ある行動のおかげで立ち往生は解消されました。女性はその後私の隣の席に戻り、何もなかったように書類に目をやっていました。恐らく、彼女も出張だったにちがいありません。(イメージでいえば天海祐希のような女性でした)
私はこのとき自分自身を恥じました。この場合、非常識だとかマナー云々よりも行動すべきだったのです。隣りの女性は自ら行動しました。良い悪いではなく、その場でできる最善のことをしたのです。これはベビーカーの是非だけでなく全てに通じるといえるでしょう。状況に対応するには行動が求められます。批判しているだけではなんの解決にもなりません。論争の前に「おたがいさま」の気持ちを持って声をかけ行動すること。それこそが大切なのではないでしょうか。