「案山子に魔がさす」
「大手町の『アンザンコ』まで、車で送って行ってよ!」と、息子がいうので、不思議に思いました。「そんな場所あったっけ?」と、息子のスマホでグーグルマップを確認すると確かにありました、「案山子」。ただし『アンザンコ』ではなく『かかし』です。
呆れるというよりもおかしくて笑ってしまいました。こんな間違い、よくあることかもしれませんが、念のため正しい読み方を言い含めておきました。
そういえば、秋雨前線が活発になり、早くも秋風を感じる季節になりました。田舎にいけば、色づき始めた稲穂に紛れて本物の案山子を見ることもできる頃なのでしょう。
「案山子に魔がさす」という言葉があります。これは秋の言葉で、奇妙なことに熱中することを意味します。
竹やワラなどを人の形にして、鳥よけに田んぼの中に立てる案山子。語源は『カガシ』と濁る音です。カガシ=『嗅がし』。もともとは獣の肉やイワシの頭を焦がしたりしたものを串にさしたりして畦道に立て、悪臭を嗅がせて鳥や獣を近寄らせまいとしていました。だから『カガシ』です。
この案山子、人間に似せるというよりも、神の依代(よりしろ)だそうです。田の神が招き寄せられて人形に宿り、その力によって田を守り豊穣の実りを授けるというお役目。しかし、神ではなく悪魔が宿ったような異変が起きることを「案山子に魔がさす」と言ったのでした。
突然仕事を辞めて、何かに夢中になる・・・というのも「案山子に魔がさす」です。とはいえ、突然の異変は、変化の激しい今のご時世では珍しくないこと。少し古風な言い回し「案山子に魔がさす」。どこかで使える機会のある言葉なのかもしれません。