「七五三現象」と経済産業省の「社会人基礎力」 企業が求める「主体性」「実行力」「課題発見力」
■厚生労働省の統計では、新卒で就職して3年以内で辞める割合が、中卒7割、高卒5割、大卒3割いるという。この現象は「七五三現象」と呼ばれている。そう言われてあらためて周囲を見渡すと、新入社員教育を受講したはずの若い人をいつのまにかその会社で見かけなくなったということは珍しくない。実際、今年4月に新卒で入社した10人のうち3人が夏を過ぎる頃には辞めたという会社もある。まさに大卒の3割が辞めているのだ。若者の離職率の高さを表す「七五三現象」はここ10年ほどは変わっていないという。
■ 経済産業省では「社会人基礎力」についてまとめている。これは「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されている。桜が開花する頃にフレッシュな気持ちで取り組んだ仕事も、時がとともにマンネリ化していないだろうか。今年の後半戦に向けて新入社員もベテラン社員も自らの”社会人力”を、そして、職場全体の「社会人基礎力」を見直してみたい。[資料 経済産業省、日経HR]
1.「社会人基礎力」3つの能力と12の能力要素とは
「社会人基礎力」とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎力」として、2006年から経済産業省が提唱しているものである。企業や労働者を取り巻く社会環境の変化により、「基礎学力」「専門知識」に加え、それらをうまく活用していくための「社会人基礎力」がこれまで以上に求められるようになった。
「3つの能力」と「12の要素」は、会社の規模や業種に関係なく社会人としての必須項目といえる。中でも企業が求める割合が高いのが「主体性」「実行力」「課題発見力」といわれている。
2.基礎力を身につけるには
「社会人基礎力」は、練習すればすぐに習得できるというものではなく、生活や仕事の中で意識して行動することで徐々に身につくものである。
それは下の表の通り「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」、さらにこれが「主体性」「働きかけ力」「実行力」「課題発見力」「計画力」「創造力」「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」で構成されている。
では、「12ある能力全てを身に付けなくてはならないのか」といえば、そうではない。すべての能力を持ち、それを発揮している人は、ほんの一握りのスーパービジネスパーソンだけである。多くの人は強み弱みがあり、その強みとなる能力を生かし、弱みとなる能力は日々向上させようと努力をしているのが現状である。
3.まずは「主体性」と「実行力」を
「主体性」とは「物事に進んで取り組む力」である。「指示待ちではなく、自らやるべきことを見つけて積極的に取り組む」こと。たとえば「マニュアル」にないことは自分で考えて行動に移すなどである。では、その「主体性」を磨くにはどうしたらいいのだろうか。
(1)周囲の期待を把握する
自分の立場を客観的に理解し、自分が何をしなくてはならないのか、周囲が自分に期待していることは何なのかを把握することである。
(2)決断する
次に、自分で考え責任を持って決断すること。日頃から「なんでもいい」「どっちでもいい」ではなく、自分で考えて決める、決めたことに責任を持つという習慣をつけること。
(3)行動する
やるべきことがわかっていても行動しないのであれば、わかっていないのと同じ。状況を把握し、やるべきことが見えれば「こうする」「これをやる」と決断し、行動すること。この3つができれば「指示待ち人間」「マニュアル人間」にはならないはずである。