F&Aレポート

「コロナ禍」の「禍」

「コロナ禍」の「禍」

 「コロナ禍において」という表現を、私たちは日々耳にしています。以前、バラエティ番組で若手アイドルの男性が「コロナ禍」を「コロナウズ」と読んで失笑を買っていましたが、さすがに今は「コロナウズ」と読む人はいないでしょう。

 うずは「渦」。「禍」とはよく似ていますが、「禍」は「わざわい」と読みます。「わざわい」は「災」もあります。よく調べてみると、「禍」は人為的なわざわい。「災」は自然現象によるわざわい、すなわち災害などを表すそうです。

 「禍」は、「戦禍」「輪禍」「舌禍」などがあります。「輪禍」とは交通事故、「舌禍」は「失言」の意味です。いずれも人為的なわざわいと言っていいでしょう。

 ただここでもうひとつ注目すべきは、「禍」の『しめすへん』は、神を表します。そのため、実際には神による「禍」でもあり、人為的な「禍」でもあるそうなのです。したがって、「わざわい」は神によるものか、人によるものなの、その境ははっきりしないということです。「コロナ禍」の「わざわい」は、神によるものか、人為的なものなのか、まさに不明…といったところです。

 そしてコロナ禍といえば、「収束」と「終息」のちがいも気になります。疫病の場合は「終息」が使われることが多いのですが、「終息」に対して、「収束」は「集めて束ねる」という意味です。「短期的収束」「収束のスピード」などは、「終わり」という結果ではなく、収まっていく過程を表しています。「コロナを抑え込む」などは、やはり「収束」の方が合っています。

 一時的に落ち着く状態の「収束」を経て、「終息」を迎えるということなのでしょう。いろいろ複雑な「コロナ禍」が、一日も早く「終息」することを祈らない日はありません。