F&Aレポート

市井(しせい)のマナー ~あるタクシー会社の試み「人間力」

市井(しせい)のマナー ~あるタクシー会社の試み「人間力」

 私がよく知るタクシー会社(T交通)では、安全に関する知識や運転技術を「仕事術」といい、接客に対するマナーや心、考え方、技術を「人間力」と呼んでいます。

「仕事力」と「人間力」は、車でいえば両輪なので両方のバランスが大事。「仕事力」と「人間力」どちらか片方だけでは、車は走らないのだということを、長年にわたり乗務員や現場に出ない管理職はじめ全社員に指導されています。

 日々事あるごとに社長自身から発信されるその言葉は、会社のすみずみまで行き渡り、接客サービスの良さでは広島一定評のあるタクシー会社です。そのため、国賓や著名人が広島に来られる時はエージェントから「T交通さんにお願いします」という指名が入るのはもちろんのこと、都内や主要都市で国際的な行事があるときも乗務員は遠方まで駆り出されるような有様です。

 さて、「人間力」というとひどく難しいイメージもあるかもしれませんが、平たくいえば「人としての魅力」ではないでしょうか。もっと掘り下げれば、他者に対する思いやりの心、ことばづかい、態度、行動、感謝の心を持つといったことになろうかと思います。

 その当たり前のことを当たり前にできるように日々訓練したり、時に見直したりするわけです。会社ぐるみやグループで見直すことを研修や講座といいます。

 研修や講座で学んだことを身につけるのに重要なことは、研修を真面目に受講するだけでなく、日常から家族や同僚間でも行うことです。マナーは身近なシーンで繰り返し実行することではじめて身につきます。挨拶の仕方、感じのいい声の出し方を知識として得るだけではなく繰り返し習慣にしていけば、臨機応変の判断ができるようになります。

 市井のマナーこそがどこでも通じる「人間力」になるのではないでしょか。