私は警察学校で外部講師として、「コミュニケーション」について授業をしています。警察官だって民間のビジネスマンと同じく「コミュニケーション力」は、求められます。寧ろ、民間人以上にコミュニケーション力が必要となることもあるでしょう。
コミュニケーション力の中でも、ホウ・レン・ソウは業務の基本となるため、ワークを通して身につけてもらいます。
たとえば、<結論>→<理由>→<具体例>→<結論>に則って意見や考えを述べる練習の際には、「世の中で最も『悪』だと思うこと」をテーマにします。
毎回よくあるのは、「殺人」「虐待」「欺瞞(ぎまん)」(人を騙すこと)ですが、先日の授業では、これまでの年にはあまり見られない回答が多くありました。
「闇バイト」「SNS」「考えないこと」「信頼を裏切ること」「責任をとらないこと」「自分に甘いこと」「人に無関心であること」など。
そもそもホウ・レン・ソウの練習なので、結論そのものよりも、理論的であるかどうかが重要なのですが、「新鮮な回答」に驚きました。
社会を震撼させるような事案そのものではなく、道徳的な回答が多いのは、時代を象徴しているのかもしれません。それだけ「道徳」や「心のありかた」が、課題と感じられる世の中なのかもしれないと、感じさせられました。
余談ですが、警察学校に入校すると6ヶ月から10ヶ月間、寮に入り規律の厳しい中で、肉体的にも精神的にも鍛えられます。昨今は少子化と、その厳しい訓練を敬遠するためか、志望者が減少傾向にあるそうですが、彼らが地域の安全と安心を守れる警察官として活躍することを祈るばかりです。
「世の中で最も『悪』だと思うこと」。あなたは何でしょうか。