F&Aレポート

「マナー」と「おもてなし」のちがい

「マナー」と「おもてなし」のちがい

 一般的に「ビジネスマナー研修」や「おもてなし講座」などがありますが、そもそも「マナー」と「おもてなし」は、どう違うのでしょうか。実際にマナー研修の受講生達に聞いてみると、「マナーは、決まりやルール。おもてなしは、思いやり」というような答えが返ってきました。多くの人が頭の中では、そのちがいを捉えているかもしれませんが、言葉ではっきり説明するのは難しいようです。少し整理してみましょう。

 まず「マナー」とは、人間関係の基礎、または行儀作法です。人に不快感を与えない、生きて行く上で好ましい行動ともいえます。語源はラテン語のマヌス=手です。

 それに対して「おもてなし」は、表裏のない心で、「この時、この場、この人に何ができるか、何をするのが相手にとって心地いいのか」を考え、行動を起こすことです。そこに対価や見返りは求めません。特徴的なのは、その場にその人がいないときも考えて「持って為す」ことです。語源はこの「持って為す」。心を持って為す(行動を起こす)ことです。「一期一会」ともいえる、いかにも日本人らしい精神であり、長い間日本人が大切にしてきた人を思う心の在り方を象徴しています。

「サービス」と比較すると、それはよくわかります。「サービス」は、「奉仕する」「仕える」という意味で、語源はラテン語で奴隷を示す「セルヴィタス」です。いつでも、どこでも、誰にでもサービスはありますが、必然的にそこには上下関係があり対価が発生します。

「マナー違反」という言葉はありますが、「おもてなし違反」という言葉はありません。

 人間関係の基礎となるマナーを身につけることは、おもてなしにも役立ちます。逆にいえば、マナーもわからないのに、おもてなしの心を発揮するのは難しいかもしれません。

 国際化やダイバーシティ(多様化)が進み、多くの価値観が混在する現代こそ、マナーの善し悪しに終わらず「おもてなし」の精神が求められるのでしょう。

 これから益々、日本人の心の働きが生かされる時代なのかもしれません。

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