F&Aレポート

「がさつな言葉遣い」と「仲間意識」

「がさつな言葉遣い」と「仲間意識」
 通りすがりに小耳にはさんだ会話。「腹減った、肉食いたい」「マジか、超ヤバいね」。思わず「?」と見てしまいました。この会話の主、足元から髪の毛まで、それなりにおしゃれした若い女性だったのです。通り過ぎたあとに、彼女たちのことをしばらく考えてしまいました。
 彼女たちは仕事や大事な場面では、もう少し言葉に気を遣うのかもしれません。プライベートで友人と楽しく過ごすときだからこそ、そんな「がさつな言葉」をつかっているのだとしたら、「仲間意識」がそうさせるのかもしれません。
 言葉遣いに限らず、マナーというものはある意味で仲間かどうかを確かめるものでもあるのです。
 話は少しそれますが、江戸時代には、「講」と呼ばれる集まりがありました(今なら会合や例会みたいなもの)。「講」には、「三脱の教え」という暗黙の約束事がありました。それは初対面の人に「お年は?ご職業は?お位は?」と、この三つのことは聞かないということです(その理由は先入観で人を見ないため)。この約束事を知らずに、ずけずけとものを言う人は、約束事を知らない=江戸の人間ではない=「田舎者」とされていました。人を差別しない口の聞き方をするのが江戸しぐさとされていたのです。
 ことほど左様に、どんな言葉遣いをするのかということも、仲間であるか否かという見極めの要点でもあったのです。
 先述の彼女たちは、世間からみれば「がさつな言葉遣い」でも、それが「仲間である」という安心感を得るものなのかもしれません。ただ、その仲間から一歩外に出れば、まったく通じず、品位を下げるだけの言葉というものもあります。
 「ことば」とは、努力をして身につける教養です。何にしても、人を教養で判断していた江戸の人たちこそ日本の文化であり、素晴らしいと感じないではいられません。

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