知的日本語トレーニング5 ~バイト語・あいまい語・若者語
「バイト語・あいまい語・若者語」とは、友人や仲間同士の親しい間柄では使えても、公の場やあらたまった席では使えない、もしかしたら教養を疑われるかもしれない、そんな言葉をいいます。たとえば、「○○げ」「○○のほう」「きもい」などが挙げられますが、その言葉をどんな言葉に言い換えればいいのか、なぜそのような表現になるのか考えてみましょう。(参考図書 美しい日本語と正しい敬語が身に付く本)
1.○○的
「私的にはOKです」「気持ち的にはイマイチです」→「私としては…」「気持ちの上では…」
「私的には」という表現には、自分の意見をストレートに言おうとしない逃げの姿勢が感じられます。意味があいまいになり、聞き手にきちんと伝わらない恐れがあります。なんでもぼやかす最近の風潮が影響しています。「私としては」「気持ちの上では」「生活の点では」などと表現を使い分ける必要がない便利さも支持されているのでしょう。
2.○○のほう
「おつりのほうはこちらになります」「Aさんのほうではどうされてますか?」→対比するものがない場合に使うのは適切ではない
「ほう」は、物事をぼかしていったり遠回しにいったりする表現。ぼかすことで慎み深い気持ちを表そうとしていますが、「おつりのほうは120円です」コーヒーだけを注文した客に「コーヒーのほうはお持ちしました」など、ぼかす必要のない場面や、対比するものがない場合に使うのは適切ではありません。複数の選択肢がある状況で「Aのほうがいい」というのは正しい使いかたです。あいまいさを好む気持ちから生まれた言葉です。
また、実は「○○のほう」は、ある種の「格差言葉」「お伺い言葉」とみる説もあります。立場の弱い人が使うのだそうです。自分に決定権があり、思い通りに周りを動かせる人は「○○のほう」などと、他者にお伺いを立てる必要なないのだとか。この言葉を聞いてイライラする人は、自分は気を遣われる幸せな立場にいると思うと良いのだとか。
3.○○みたいな
「一緒にやろうよ、みたいな感じで」「謝ればいいんだろう、みたいな態度」→「といった」「といわんばかりの」
「一緒にやろうよ」のように、会話文などの引用句を「みたいな」で受ける言い方は本来は謝りです。会話を引用するなら「○○という」「○○というような」「○○といった」などが正しい表現です。
4.普通に○○
「普通に美味しい」「普通に楽しい」→「お世辞抜きで美味しい」「率直にいって楽しい」
大人が耳にすると「可もなく不可もなく」という風に理解しますが、若者語としては「お世辞抜きで美味しい」という積極的肯定になります。「素で」という言葉と同様に、「率直にいって」「飾らないで」などの意味が含まれるといいます。どちらの意味なのか真意が伝わらず誤解を招く恐れがあります。
5.○○げ
「その色よさげじゃん」→「その色、いい感じじゃん」
「○○げ」という言葉は、方言が若者の間で使われ広まった可能性があると思われている言葉です。方言としては通用しても、標準語として使うと意味が通じないこともありますし、誤りのケースもあるので注意したものです。「良さげ」「ヤバげ」など、これまで「げ」の付かなかった形容詞にも広まっていますが、やはり標準的ではありません。特に「ヤバげ」の「ヤバい」は、望ましくない場合に用いる場合(「肥りそうでヤバい」など)と、プラスの評価に用いる場合(「美味しい、ヤバいよ」など)があるので、公的な場では使えない言葉です。