F&Aレポート

日本語トレーニング はなす・きく・よむ(9) 読み方で意味が違う「一人二役ことば」

日本語トレーニング はなす・きく・よむ(9) 読み方で意味が違う「一人二役ことば」

 二通りに読めて、読み方が違うと意味が違ってしまうことばがあります。
 次の熟語の意味を参考にして読み方を答えてください。
(1)分別 a(     )=道理を知る   b(     )=種類を区別
(2)開眼 a(     )=さとり     b(     )=見えるようにする
(3)能書 a(     )=字が上手    b(     )=効能書き
(4)空言 a(     )=根拠のない噂  b(     )=嘘
(5)境界 a(     )=境遇      b(     )=境い目
(6)追従 a(     )=人の後に続く  b(     )=へつらう
(7)目下 a(     )=その最中    b(     )=立場が下
(8)地味 a(     )=目立たない   b(     )=土地の質

<回答>
(1)aふんべつ/bぶんべつ   (2)aかいげん/bかいがん
(3)aのうしょ/bのうがき   (4)aくうげん/bそらごと
(5)aきょうがい/bきょうかい (6)aついじゅう/bついしょう
(7)aもっか/bめした     (8)aじみ/bちみ

 やまとことばに中国から伝わった漢字をあてて、日本語はできています。中国語の意味を引き継いでいるものもあり、それに漢音読み、呉音読み、あるいは訓読みが入り混じって、このように多様化しています。次のことばも同様です。

「一間」(いっけん)=長さの単位/(ひとま)=ひとつの部屋
「一目」(ひとめ)=ちょっと見ること/(いちもく)=碁でひとつの石や目
「身上」(しんじょう)=生い立ち/(しんしょう)=財産
「大手」(おおて)=城の表口/(おおで)=態度、ふるまい
「黒子」(くろこ)=歌舞伎の後見役/(ほくろ)=ほくろ
「風声」(かざごえ)=かれた声/(ふうせい)=便り
「築地」(ついじ)=塀/(つきじ)=埋め立て地

■次は、aとb、どちらの読み方が正しいでしょうか。
(1)「任務を完遂 a(かんすい)  b(かんつい)する」
(2)「さっきは、とんだ愁嘆場 a(しゅうたんば)  b(しゅうたんじょう)を演じた」
(3)「あの人は○○派の領袖a(りょうしゅう)  b(りょうゆう)です」
(4)「彼のあの自信満々な態度にすっかり気圧a(けお)  b(きお)された」
(5)「歴史の過渡期a(かとき)  b(かどき)を迎えた」

<回答>
(1)「完遂」(かんすい)は完全にやり遂げること。「かんつい」と誤読されることが多い
(2)「愁嘆場」(しゅうたんば)はもともと演劇用語で、涙を流す場面のこと
(3)「領袖」(りょうしゅう)は衣服の襟と袖のこと。目につきやすい部分だということからボスのことを言うようになった
(4)「気圧(けお)される」は心理的に圧倒されてしまう
(5)「かどき」と読むのは間違い。「過度(かど)」は「度が過ぎる」ことだが、「過渡(かと)」は「移行」「脱皮」を意味する