映画「ボンジュール、アン」に見る食事のマナー
巨匠フランシス・フォード・コッポラの妻エレノア・コッポラが80歳にして、自らの体験をもとに長編劇映画の監督、脚本を手がけた映画「ボンジュール、アン」をご覧になりましたか?
子育てを終え、人生ひと区切りを迎えた女性アンが、カンヌからパリへ向かうドライブで、美しい景色や美味しい食事、ユーモアに富んだ会話を楽しむうちに、人生の喜びを再発見するというストーリーです。「運命の女」「トスカーナの休日」のダイアン・レインがアンを演じます。
この映画には、ワインと食事を楽しむシーンがたくさん出てきます。印象的なのは、主人公のアンの肩肘張らない立ち居振る舞いです。アンは時々、高級レストランでワインを飲む際にワイングラスの脚ではなく、膨らみのあるカップの部分を持っていました。これはマナー的にいえばNGなのですが、「隙」のある感じがたまらなく良いのです。
仕事で大成功を収めている映画プロデューサーの夫を持つアンは、当然のことながらマナーを身に付け世界を飛び回り、セレブリティな場所や人間関係にも気後れすることはない大人の女性です。それだけに、あえてマナーを外すしぐさは余裕を感じられました。
また、エスカルゴを勧められて、食べるふりをして床にエスカルゴを落とすシーンも。真似をする行為ではありませんが、嫌な感じはなくクスッと笑えました。恐らく、食べないまま残したり、「嫌いなんです」というよりもずっと良いのではないかと思えました。(落としたエスカルゴは、後で子どもが拾って食べてしまうので、結局は落としたことがバレてしまうというオチがあるのですが)
本当にマナーが身に付いている人は肩の力が抜けているのです。むしろ、マナーを逸脱することで周囲をホッとさせます。マナー崩しても品が悪くならないのが、真に品のある人といえるのかもしれません。