F&Aレポート

「最高のリーダーは何もしない」に学ぶ ~最高のチームづくりは「女性」がカギ

「最高のリーダーは何もしない」に学ぶ ~最高のチームづくりは「女性」がカギ

前回につづき「最高のリーダーは何もしない」(ダイヤモンド社)の著者 藤沢久美氏による
リーダーシップの真髄をご紹介します。今回は女性について。イスラム教の戒律が厳しいサウジアラビアを、藤沢氏が訪問した際に驚いた女性たちの働き方、考え方についてご紹介します。

1.女性メンバーは「炭坑のカナリア」である
 組織・チームにおける女性メンバーというのは「炭坑のカナリア」、つまり組織の空気の悪化をいち早く知らせてくれる存在です。かつて、炭坑夫はカナリアを連れて炭坑に入ったそうです。カナリアという鳥は常にさえずっていますが、窒息ガスや毒ガスに気づくと急に鳴き止み、炭坑内の環境変化を教えてくれる貴重な存在でした。

 組織においても同じで、女性達は職場で抱いた違和感などを、率直に言葉にすることが多いように思います。リーダーはこうした女性の声に耳を傾けることで、いち早くチーム内の不協和音に気づくことができます。

 しかし、女性たちが声を上げやすい環境をつくるだけでは不十分です。今後の成長を支える意味でも、問題提示と解決策をセットで提案してもらうような環境づくりが必要です。

 オフィシャルに意見を聞く以上、ただの愚痴で終わらせないように、不満を解決するためのアイデアも語ってもらうことで「炭坑のカナリア」から「炭坑で共に働く仲間」へと女性達にキャリアアップしてもらえるよう、リーダーは配慮すべきです。

2.なぜ「サウジの女性リーダー」は輝いているのか?
 女性も男性も関係なく優秀なリーダーになれると確信したのは、サウジアラビアを訪問したことがきっかけです。サウジアラビアは、イスラム教の戒律が厳しい国で、親族以外の男女が同じ部屋で過ごすことは許されていません。結婚披露宴ですら、新郎と新婦が別々の部屋に分けられ、男性だけ、女性だけでお祝いするぐらいです。こんな話をきくと、ますます「サウジは女性が抑圧された国だ」という印象を抱くかもしれませんが、現実は違います。

 商工会議所を訪問したときのこと。この国では商工会議所も男女別に存在します。私が訪問したのはもちろん「女性商工会議所」で、建物に一歩は入るとそこはもう女性しかいません。受付から会議所会頭まですべて女性で、登録しているメンバーも女性のみ。

 女性しかいない環境で仕事をしている女性には「男性のサポートをする」という意識がそもそもなく、それぞれが適したポジションで責任を発揮できます。「女性は男性のサポート」という刷り込みは、男性と女性が一緒に働いているからこそ生まれます。仕事の環境に女性しかいなければ、女性でもリーダーとしての役割をごく自然に担うことができるのです。意識を変えるためこんな環境づくりも、リーダーの役割です。

3.「国・会社にお願いする」から「ないなら自分でつくる」へ
 サウジアラビアで、いくつかの女子大を訪問し、女子学生に向けて日本の女性活躍状況などをデータとともに話しました。出産・子育て時期に女性の就業率が谷を描く、いわゆる「M字カーブ」のグラフを見せたところ、女子学生から「なぜ日本女性は、出産・子育てで仕事を辞めるのか」という質問がありました。保育所や就労時間などの説明をすると、さらに学生たちからは、「どうして原因がわかっているのに、解決しようとしないのですか?」「保育所が足りないなら自分たちでつくればいい、もっと就労時間の融通がきく職場をつくればいいのでは?」という意見が次々に出ました。彼女たちが疑問に思っていたのは「政府や会社に期待するのではなく、なぜ課題を解決する事業を、自分たちで起こそうとしないのか」ということでした。「世の中にないならつくればいい」これはまさに起業家の発想です。サウジアラビアのある女子大の学長は「我が大学はJob Seeker(仕事を探す人)を育てるのではなく、Job Meker(仕事を生み出す人)を育成することを目的にしています」と言い切っていました。誰かに改善を求めるのではなく、自分たちで改善策を見つけ出し実行する。それは女性に限らず、あらゆるリーダーに必要な精神です。