「イメージの共有で」ヒューマンエラーを防ぐ~部下への指示・上司への報告、「主観的」になっていませんか?
「ブラインド・トーク」というワークがあります。二人一組になって、一人が絵を見て、言葉だけでその内容を伝え、相手に同じ絵を描いてもらうというものです。
もちろん、絵を描く人はもとの絵を見てはいけません。制限時間は5分。あとで「もとの絵」と「描いてもらった絵」を見比べて、イメージしたものの違いや説明の仕方などをお互いにフィードバックします。
ここで様々な気づきがあるのです。たとえば「大きなが木」と伝えても、どれくらい大きいのかわかりません。「月を描いてください」と伝えても、三日月なのか満月なのか、イメージする形はそれぞれです。
この気づきを職場でどのように活かすのか。組織内のコミュニケーションにおいて、イメージを共有することは、部下への指示・伝達、上司への報告の際にも求められます。ひいては、組織の生産性、課題解決や目的達成などにも通じます。
「イメージの共有」どうすれば主観的にならない伝え方ができるか「観察力磨く 名画読解(エイミー・E・ハーマン著)」より
観察に客観性を持たせるには、対象物を数え、測定し、それができないときは大きさを観測するといいい。たとえば「小さい」という形容詞は人によって受け止め方がちがう。テントウムシと犬を比べればテントウムシの方が小さいが、犬とゾウを比べれば犬の方が小さい。こうした解釈上のちがいは、観察結果を数値化することによって最小化できる。
「小さい」は主観的だが、「長さ2.5センチ」は客観的だ。測れるときには測り、測れないときはだいたいの大きさを推測して、とにかく数字で表すようにする。
数えたり測ったりできないものも数値化できる。『くさい』犬ではなく、『1から5までで、5を一番くさいとすると、その犬のにおいは4だ』のように表す。
最後に形容詞もなるべく具体的にする。どんなにおいを『くさい』とするかは人によって変わる。刈りたての草のにおいが嫌いな人もいれば、ガソリンのにおいが好きな人もいる。そこで単に『くさい』ではなく、たとえば『死んだ魚のようなにおいがする』のようい伝えよう。客観性が必要となるのは観察だけにとどまらない。誰かに伝えるときも事実に焦点を絞ること。仮に次のふたつの説明を読んだら、どちらを客観的だと思うだろう。
A 孤独な女性が一人、コーヒーショップで、大理石の白い丸テーブルについている
B 口を閉じ、視線を落とした女性が、カップを手にし、白い皿ののった天板が白い丸テーブルにひとりで向かっている
どちらも同じ場面を表している。女性は静かに座っている。しかし、Aの説明は女性を孤独と決めつけている。孤独というのは寂しさや悲しみを含む表現だ。これは女性の様子を主観的に憶測したものであり事実ではない。Bの説明は、女性の顔つきや態度を事実に基づいて説明している。彼女は下を向いていて、口は閉じられている。女性の心理状態について憶測は含まれていない。
Aの説明はまた、女性がコーヒーショップにいると断言している。Bは女性がカップを持っているという事実のみを述べていて、カップの内容物(入っているとすれば)や、女性がいる場所を特定していない。
憶測は見てない人に誤った認識を与える。また、情報が伝達される過程で、誤った認識が事実にように扱われる危険性もある。以上ように、状況を正確に理解するためには、できるだけ多くの客観的事実を収集しなければならない。
先に述べた「ブラインド・トーク」では、「伝え手は伝えるのみ。聴き手は聴くのみという立場の固定が無意識に起こっている」「説明する側が上で、受ける側が下という感覚になる」「共通認識とは、伝え手と聴き手で作りあげていくもの」などの意見が得られ、客観的に伝えることの重要性を実感できる機会となります。