親子で学べる「12歳からのマナー集」
パズルやクイズを集めた「頭の体操」シリーズなどの著者多胡輝氏が3月15日に逝去されました。多胡氏は、インドネシア・スマトラ島生まれ。東大大学院修了。1966年、心理学研究の傍ら「頭の体操」を出版し200万部を越えるベストセラーとなりました。同書はシリーズ化され、2001年の第23集まで累計で約1200万部が売れたといいます。ただ、「頭の体操」に留まらず、子育てや中高年の生き方をテーマにした書籍も多いのが面白く、多胡氏の幅の広さ、教養の深さを感じないではいられないところです。今回は、多胡氏のご冥福を祈りつつ「12歳からのマナー集」(PHP文庫)をご紹介します。親子で学べるマナー入門書の一冊、なぜしつけが必要なのか、なぜいけないのか、その諭し方、説明の仕方にも注目です。
1.ヒーローが活躍するマンガやテレビの世界と「現実の世界」の違いは?
現実の世界はお話の世界のように、自分の思い通りにはなりません。極端なことを言えば、お話の世界は死んだ人を生き返らせることもできます。でも。現実の世界ではそんなことは起こりません。マンガやドラマを観て、死んでも人は生き返ると考えている小学生がかなりいるそうですが、そんなことは絶対ありえません。
お話の世界では、悪人をやっつけたヒーローは人気者になります。でも現実の世界では警察に事情を聞かれ、場合によっては相手を傷つけたとして逮捕されます。相手の人からは、ケガの治療にかかったお金や、お詫びのお金(慰謝料)を払うよう求められます。
現実の世界では、すべての人が主人公。だから自分の思い通りにはいかないのです。
2.言葉は生き物。タイミング次第で、短い言葉でも心にスッと届きます
間違ったことをしたら謝る、親切にしてもらったらお礼を言うというのは、相手に不快な思いをさせない大切なマナーです。
では上手に謝ったり、お礼を言ったりするにはどうしたらいいでしょう。ちょっとしたポイントがあります。それは、「タイミングを逃さない」ということです。
気がついたらすぐ謝りのメールを書く、親切にしてもらったらすぐお礼のメールを出すということです。早ければ早いほど気持ちは伝わります。
友達とけんかをしたまま別れてしまったときは、帰り道でケータイメールを書きましょう。内容は、「さっきはごめん。反省しています」という短いものでいいのです。言葉は短くても、タイミングさえよければ十分に相手の心に届くはずです。
3.レストランの中を走り回るのはネズミと同じ行為
小さな子どもがレストランの中を駆け回っている光景を時々見かけます。親は知らんぷりです。案の定転んで、今度は大泣きです。やっと親が出て来ましたが、周りは「これがあの子の親か、しつけができない困った親だな」という目で見ています。
人間はそのままでは動物と変わりません。それを社会に出して恥ずかしくないように躾ける義務が親にはあります。
動物ならしつけはいりません。レストランの中を走る動物はわたしの知る限り、深夜に時々現れるネズミだけです。つまり駆け回っている子どもに注意をしないのは、親も子も限りなくネズミに近いのかもしれません。店の人を大声で呼ぶのもいけない。
他人が“楽しく美味しく静かに”食べるのを妨害してはいけません。
4.「ありがとう」は魔法の言葉。一日何回言ったかが幸せのバロメーター
「ありがとう」と言われてイヤな気分になる人はまずいません。キミが誰かに何かをしてもらって「ありがとう」と言えば、相手は笑顔を返してくれるでしょう。「ありがとう」は人間関係の潤滑油。言えば言うほど、ギスギスした感情から遠く離れることができます。
お店で店員さんに品物を探してもらったり包んでもらったりしたら「ありがとう」か「ありがとうございます」。クラスメイトが落とし物を拾ってくれたり、宿題を教えてくれたりしたときも「ありがとう」。お母さんが、朝、ハンカチや靴下を揃えてくれたときも「ありがとう」。一日に何回「ありがとう」と言っていますか。言えば言うほど幸せになれるのです。「ありがとう」を口癖にしてしまいましょう。