F&Aレポート

フレッシュマンの「春一番」

フレッシュマンの「春一番」

 新入社員を迎える季節です。学生と社会人のちがいに戸惑うフレッシュンマンにどんな言葉をかけますか?作家石田衣良氏のエッセー「空は、今日も、青いか?」にはこんな一節がありました。

 学生時代は好きな相手とだけ付き合っていればよかった。でも、社会では嫌な人間とも顔をつきあわせて仕事をしていかなければいけない。ずるい人、いいかげんな人、上司にごまをするのだけ上手い人、それは社会にはいろいろな人がいる。ここは大きな動物園だと思って、せいぜい観察してみよう。思うようにならないことも、職場の嫌な人間も、この世界という大きなスストーリーを形づくる小さなエピソードだと思えば、これほど面白いものはない。映画だって、脇役や悪役がいいと、ピリッと締まっておもしろくなるでしょう。あれと同じなのだ。

 しかも、そうした悪役は、実は社会の中では、少数派なのである。ほとんどは懸命に仕事をして、足りない力でなんとか成果を出そうと頑張る、あなたやぼくのような人間なのだ。学生時代は成功者や歴史上の大人物を尊敬していたと思う。でも、自分で仕事を始めればきっとわかるはずだ。この社会には思いもかけないところに素敵な仕事をしている人がいて、目立たないけれどその人達の仕事で世界は動いている。みんながそういう人のひとりになることを、ぼくは望んでいる。それは難しいことではない。だって、こんなにたくさんいい人はいるのだから。誰にでも手が届く目標である。

 社会に出たら、仕事以外のことを大事にしよう。何か勉強をひとつ、遊びをひとつ見つけてください。学問と趣味。早いうちにそれを見つけて、10年間たっぷりと社会生活をしながら楽しんでください。その遊と学は、その後のあなたの数十年を照らす光になる。迷ったときやつらいときには、どう生きていけばいいかを示してくれる夜の海の灯台になる。

 フレッシュマンのみんな、いよいよあなたの出番がやってきた。自分の風と自分の色で、思う存分活躍してほしい。この世界は新しい風を吹かせてくれる新人を、いつだって必死の思いで待っている。春一番は、みんなの中から吹いてくるのだ。