あなたは日本語ペラペラですか3 ことばのセンス“文章語”“口頭語”“俗語”
■ ことばは、緊張度によって使い分けられます。話す場合なら、正式の挨拶か、仲間内の雑談か。
書く場合なら、学術論文か、ビジネスレターか、メールやSNSなどか。場や相手によって適切な用語レベルが違ってきます。
■ “文章語”“口頭語”“俗語”の違いをことばの格とするなら、それぞれのシーンで使われる“ことばの格”が不釣り合いだと違和感を覚えます。
■ たとえば、「する」に対して「やる」は俗語です。ですから「やらせていただきます」という語は存在しません。正しくは「させていただきます」または、「いたします」となります。ことばのセンスを見直してみましょう。(語感トレーニング 中村明著 参考)
1.次の文章は、仕事の取引先に対する手紙です。(1)~(4)の箇所で、もっともふさわしい語をア~ウから選んでください。
(1)[ア この間 イ 先日 ウ 過日]の件、お力添えに改めて御礼申し上げます。小社の今後の製品開発にとって(2)[ア きわめて イ とても ウ はなはだ]
(3)[ア 大事 イ 重要 ウ 大切]なご助言をいただきました。
(4)早速[ア 今日 イ 本日 ウ 当日]の役員会に諮り方針を決定する予定です。
回答(1)ウ (2)ア (3)イ (4)イ
私たちは、無意識のうちにことばを使い分けています。
「みょうにち」「あす」「あした」、「過日」「先日」「この間」「こないだ」などの候補から、それぞれにふさわしいことばを選んでいます。
日常語の中でも少し軽めで、あらたまった会話や硬い文章に使うと違和感のある、そういうレベルのことばを“口頭語”として位置づけると、「みょうにち」「あす」に対する「あした」、「過日」「先日」に対する「この間」などはそのレベルにあります。さらに、もう少しくだけると「この間」に対する「こないだ」になります。
そこからさらにレベルが下がると“俗語”になります。ただし、“口頭語”と“俗語”は人によって感じ方も違うので、厳密な線引きをするのは無理があります。おおよそ、「ちっちゃい」「やっぱり」「いいじゃないか」を“口頭語”レベルとするとすれば、「ちっぽけ」「やっぱし」「いいじゃねえか」がくだけた会話レベル、「ちっぽけ」「やっぱ」「いいじゃん」が“俗語”レベルという感じでしょう。
2.次は使用傾向の異なる表現です。(1)~(4)の空欄に、それぞれア~エの中からもっともふさわしい語を入れてください。
(1)この植物は、日陰でもよく育つ( )をもっている。
(2)この馬は( )が荒く、とても乗りこなせない。
(3)まったく彼は、やると決まればすぐさまやらずにいられない( )だからなあ。
(4)二人の離婚の理由は( )の不一致だそうです。
ア 性格 イ 性質 ウ 性分 エ 気性
回答(1)イ (2)エ (3)ウ (4)ア
意味とは別に、よく使われる分野が偏っているところから、感じの違いが生じることがあります。
「性格」も「性質」も「気性」も似た意味ですが、植物の場合は「性格」や「気性」ではなく、主に「性質」が使われるようです。「気性」は「優しい」「控えめ」というより、「激しい」「荒々しい」「鬼のような」という方向の用例が目立ちます。「性分」もよく似ていますが、特にある具体的な行為をしないではいられないという形で姿を現す例が多くみられます。
そのほか、「跳ぶ」のも「跳ねる」のも同じような動作ですが、「跳ねる」は子どもが遊んでいる雰囲気があり、正式の運動競技には「跳ぶ」を用います。「争う」「競う」も、前者はねらっているものを手に入れようとすることに重点を置き、後者は優劣を決することに重点を置くような傾向が見られます。