F&Aレポート

明るく挨拶「束の間(つかのま)つきあい」~江戸しぐさにみるコミュニケーション

明るく挨拶「束の間(つかのま)つきあい」~江戸しぐさにみるコミュニケーション

 たとえば、エレベーターの中で顔見知りに合いました。名前は知らないけれど、よく顔を合わせる人です。どうやらお互い同じビルに入っているテナントの方のようです。あなたは挨拶をしますか?または、一言二言声をかけますか?

 恐らく、ほとんどの人は特に言葉を交わすこともなく、その場をやり過ごすことでしょう。現代ではそれが普通のことになっているのかもしれませんが、江戸の町に住む人達は違っていました。「束の間つきあい」といって、二言三言の軽い声かけをすることがマナーとされていました。「町で知り合いに会えば束の間つきあいをしましょう!」という具合です。たとえば、こんな具合です。

 「これはお久しぶりです」
 「こちらこそ、今は先を急ぎますので失礼します」
 知り合いでもなく、たまたま居合わせた人にも「束の間つきあい」をします。
 「結構なお日柄ですな」
 「おかげさまで」など。

 いつ何が起こるかわからないわけです。江戸の人たちは一言、二言の挨拶を交わしました。江戸では、知り合いに出会ったら進んで声をかけ、通りすがりでも簡単な挨拶は付きものでした。別に親密に話し合う必要はないけれど、軽い言葉を交わすことが、人間関係を円滑にする潤滑油と考えられていたのです。

 また、声をかけ合うことでコミュニケーションだけでなく、防犯効果もあったようです。「見かけない人がいた」「どうも怪しい人物がいた」「お国なまり(方言)があった」など。

声をかけ合う習慣が根付いているところでは、すぐに身元がばれてしまいそうで、犯罪を起こしにくくなるというねらいがあったのかもしれません。

 また、江戸の人々は、生活が乱れれば言葉も乱れてくると考えていました。現代はどうでしょう?江戸の人々の知恵や習慣に見習いたいところが多々ありますね。