昨日、若手社員対象にビジネスマナー研修を行いました。異業種が集まる研修で午前10時から午後4時まで、昼休憩をはさんで、挨拶、言葉づかい、電話応対、身だしなみ、ホウレンソウなど、一通りをぎゅっと詰め込んで、それぞれのポイントを確認し理解を深めてもらいました。
そんな中で、一人の女性から日頃の電話応対で疑問に感じていることについて質問がありました。衣服の製造から販売までを手がけるその会社では、通販もしているため、電話での注文受付があります。その際に「どちらのご案内をご覧いただいて、ご連絡をいただいておりますか?」と、電話口で対応しているスタッフがいる。毎回、敬語に違和感があるが、何が問題なのか、なぜ問題なのかがわからないため、指摘しようにもできず、ずっとモヤモヤしているということでした。
今回は、研修で実際に指導させていただいた、敬語、言葉づかいについてご紹介します。
どこか変だけど、理由がわからず指摘できないモヤモヤ
「どちらのご案内をご覧いただいて、ご連絡をいただいておりますか?」
この例に限らず、変だなと感じても、理由がわからなければ、指導もできず改善のしようがありません。また、「丁寧に対応しなければならない」と思うと、過剰に敬語を使って、かえって失礼な表現になることもあります。
上記の言葉は、お客様に対して、尊敬語(上げる言葉)と謙譲語(下げる言葉)が入り混じった表現になっていることにお気づきでしょうか。文章を分解して説明すると次の通りです。
「どちらのご案内をご覧いただいて」→ ○「どちらのご案内をご覧になって」
「ご覧いただく」は→尊敬語「ご覧になる」と、「見てもらうの」謙譲語である「見ていただく」がセットになった表現です。
慣用表現として間違いとはいえないのですが、「ご覧になる」という尊敬語だけでも敬意は伝わります。むしろすっきりとした表現になります。
「ご連絡をいただいておりますか?」→ ○「ご連絡をいただいていますか?(いますでしょうか?)」→ ○「ご連絡をくださっていますか?(いますでしょうか?)」→ ○「ご連絡を頂戴していますか?(いますでしょうか?)」→ ○「ご連絡をされていますか?(いますでしょうか?)」→ ○「ご連絡をしていらっしゃいますか?」
「ご連絡」は丁寧語。
「いただく」は謙譲語。
「おりますか」の原型「おる」は謙譲語。
このケースでは、連絡をしているのはお客様なので「おりますか」という謙譲表現は間違いです。したがって、シンプルに変えるとすれば「ご連絡をいただいていますか」になります。
「ご連絡をいただく」が、丁寧語と謙譲語の組み合わせになるので、「ご連絡いただく」よりも「ご連絡くださる」の方がベターです。
だた「ご連絡くださる」は丁寧語なので、尊敬語にして「ご連絡を頂戴する」「ご連絡をされる」「ご連絡をしていらっしゃる」などなら、あらたまり度はアップします。
また「ご連絡」は「お電話」でも可。「お電話」の方が少し柔らかく聞こえます。
「どちらのご案内をご覧になって、お電話を頂戴していますでしょうか?」「どちらのご案内をご覧になって、ご連絡をくださっていますか?」
一口に敬語表現と言っても、どの程度あらたまるのかによって、敬語のチョイスや組み合わせは変わってきます。もし、私自身が対応するのであれば、上記に示したいずれかであろうと考えます。敬語は難しいかもしれませんが、まずは丁寧語、尊敬語、謙譲語の使い分けができるようになりたいものです。