特集 日本人の数の感覚「六」に込められた秘宝
ある統計によると、0~9の中で、日本人が好きな数字は、6対4の割合で奇数が好きな人が多いそうです。
日本の主な行事を並べてみても、元旦、ひな祭り、子供の日、七夕など、すべて奇数が重なっています。これには古代中国の陰陽思想も影響していると考えられています。陰陽思想では偶数は陰の数とされ縁起が悪い、反対に奇数は陽の数で縁起が良いとされているのです。とはいえ、季節は梅雨を迎える6月です。6月の始まりにあたり、「六」という数に秘められた魔力を探ってみましょう。(参考図書 日本人数のしきたり 朝倉晴武著)
1.芸事は六歳の六月六日に始めるのがよい?
六月六日は「お稽古始めの日」とされています。これは、昔から「芸事は六歳の六月六日に始めると上達が早い」といわれているからです。
一説によると、指折り数えると五までは親指から順に指を曲げて数えますが、六は小指を立てて数えることになります。そこから「子が立つのは六」と縁起担ぎをするようになり、六歳六月六日を芸事始めの日にするようになったといわれています。
また、六十干支によるものとする説もあります。昔は数え年で年齢を数えていたので六歳は実際には満五歳になります。五歳は十二ヶ月×五で六十ヶ月に相当します。六十という数字は六十干支に通じ、干支が一巡したと考えられ、新しいことを始めるのにふさわしい時期だとされたわけです。
2.人の生死に関わることに用いられる「六」
六は安定した数と考えられています。二が三つに分けられますし、三と三、一と五という奇数に分けることもできます。仏教には、「六」を用いた言葉がいくつも見られます。「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」もその一つで、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・知覚という人間の感覚を清らかにすることをいいます。また、「六大」といえば、万物を構成する六つの要素 ?? 地・水・火・風・空・識・のことを指します。さらに、人が死ぬと生前の報いで地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道の「六道」の間を徘徊するといわれています。これを「六道輪廻(りんね)」と呼びます。
人が生きていくためになくてはならないもの、あるいは人の生き死に関わることに「六」という数が用いられるのも、「六」の持つ安定性と無関係ではないでしょう。