これぞSDGs、着物でGo! 日本人の知恵と技術と文化の結晶をもっと活用したい
「母の小紋 娘と着まわし SDGs」名古屋にある環境企業は、毎年社内でSDGs川柳を募集しています。ご縁あって、軽い気持ちで応募したらなんと優秀賞をいただきました。
我が家には母の時代からの古い着物がたくさんあります。しばらく「タンスの肥やし」でしたが、あるときその手触りの良さに惹かれて取り出すと、着物が1000年の眠りから目覚めたように(実際には1000年も経っていませんが)その輝きを放つのがわかりました。
母がまだ20代の頃に仕立てたという着物ですが、帯や帯締めなどの小物を変えることで、今でも十分おしゃれに着ることができるのです。それも、私だけでなく娘が着ても、まったく遜色ないというよりも、むしろ気品のある着物になるのです。
着物だけでなく、着ている人までが格上げされたような雰囲気になります。なんという着物マジック!!世界広しといえ、こんな衣料が他にありましょうか?
そんな小さな驚きを川柳に込めたのですが、せっかくならここで着物の魅力について、もう少し共有したく、日本人が知っているようで知らない着物の知識をご紹介したいと思います。(参考:教養としての着物 上杉恵理子著)
1、着物は絵画を身にまとう衣装
着物が多くの人の視線を集める理由は、描かれた柄ではないでしょうか。
四季の花を細かに散りばめた着物、ひとつの植物をたっぷりと描いた着物、鶴や鯉など鳥獣をいきいきと表した着物、源氏物語のような平安貴族の邸宅や庭を描いた着物、里山や漁村など日本の原風景を呼び起こす着物。
時に細やかに、時に大胆に、着物に描かれた柄はまさに絵画そのものです。
着物に絵画のような絵柄を入れられる理由は、着物が長方形の平面の布8枚をつなげて作られていて、絵を描くスペースがあるからです。平面な布を縫い合わせて、丸みのある人間の身体に合わせて着ていく服が着物なのです。
どれくらい大きな絵を描くことができるのかと言うと、巻きスカート状になっている裾まわりを広げると、横150cm、縦80cmほどの広さにもなります。
肩から裾へ、また肩から袖へと繋げることでも縦長の一枚絵をデザインすることもできます。帯も着物と比べると面積は狭くなりますが、やはり平面の布なので、絵を描くことができます。着物を着ることはまるで、大きなキャンパスを2~3枚着ているようなものです。
洋服は、人の身体に合わせた立体裁断なので、絵を描けるスペースは多くはありません。着物のように、大きく絵を描ける衣装は珍しいのです。
2、浮世絵とともにヨーロッパで大流行
着物に絵を本格的に描き始めたのは江戸時代のこと。扇絵師だった宮崎友禅斎という人が、白生地に防染糊の内側に色をつけていく染め方を始めます。この技法でより細やかに輪郭のはっきりとした絵を描けるようになりました。
宮崎友禅斎が始めたこの染めの技法は「友禅染」と呼ばれるようになり、京都の京友禅、金沢の加賀友禅、江戸の東京友禅として今も受け継がれています。
さらに、尾形光琳や菱川師宜などの有名絵師も、着物のデザインを手がけます。絵師が服のデザインをすることも、世界的に珍しいことなのだそうです。
絵画のような絵柄が入った着物は、浮世絵とともに、19世紀から20世紀初頭にヨーロッパで「ジャポニズム」を流行させ、西洋絵画やファッションに大きな影響を与えました。現代でも着物独自のデザインに、世界中のアーティストの注目を集めています。