大人も楽しめるフィンランド式 子供の思考トレーニング 理由を3つ挙げると論理力が身につく
■たとえば「好きな季節はいつですか?」と聞かれて「秋です」と答えるとしたら、その理由を3つ挙げてみましょう。「理由その1気持ちのいい気候だから。理由その2食べ物がおいしいから。その3…」。3つの理由を挙げるのは意外に難しいものです。■フィンランドの教育水準の高さは世界最高レベルといわれていますが、フィンランドでは子供の頃から、論理的に述べる訓練をしています。「なぜそう思うの?」と聞かれて「なんとなく」や、「別に…」では相手を説得することはできません。今回はフィンランドの子供達の訓練をご紹介しましょう。(フィンランド式思考トレーニング 諸葛正弥監修 PHP文庫)
1.競争原理を排した「のばすための指導」世界に名だたる教育先進国
フィンランドの教育水準の高さは世界最高レベルといわれています。OECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査で、フィンランドは毎年トップクラスに名を連ねています。どのような教育を行っているのでしょうか。
義務教育は9年間。これが日本の小学校6年、中学校3年に相当します。大きく違うのは、2ヶ月以上の長い夏休みがあること。その間、宿題もほとんどないのです。すべての学費は無料で、授業料以外に給食費、ノート、鉛筆、消しゴムなどの学用品も無料です。
クラスは少人数で編成されており、日本では当たり前の通知表やテストがありません。義務教育が終わるまでは、学力で順位を決めたり他人と比較したりというやり方を排除しています。総合学習が重視され、授業時間数もけっして多くありません。詰め込みの教育は子供達の自信を失わせ、成長するための資質を損なうという教育観に基づくものです。
このような教育で高い結果が出せるのは、教師に対する厳しいトレーニング、実社会と恊働してひとりひとりの子供達の力をのばすためのきめ細かな指導の積み重ねがあるからです。このような競争原理ではない恊働・助け合いの教育は、福祉国家の考え方の中から生まれてきたといえるでしょう。
2.理由を明確にすれば論理力が身につく
論理力とは、簡単にいうと「なぜ?どうして?」に答えられる力、つまり筋道立った理由をつけて意見を言うことのできる力のことです。
たとえば「私は○○だと思います」「私は○○が好きです」のようなちょっとした意見でも、その理由を聞かれて「ただ何となくそう思ったから」では相手に納得してもらうことはできませんね。だれもがあなたと同じ考え方をもっているわけではないからです。
意見には理由が必要です。なぜそう思うのか、なぜ好きなのかを相手に伝わるように理由づける論理力は、コミュニケーションに欠かせない、基本的な力なのです。
フィンランドの国語教育では、理由付けがとても重要視されています。どんなことでも必ず理由を明確にして意見をいう訓練が小学校から徹底されています。
生徒が何かを発言すると、先生は必ず「どうしてそう思うの?」と理由を答えさせます。こうやってフィンランドの子供達は、自然と「意見?理由」の思考回路ができあがっていくわけです。理由を述べて相手を説得し、自分の意見を理解してもらう。この過程でいろんな角度から物事を考え、組み立てる論理力がやしなわれます。これが読解力にもつながっていくでしょう。
3.理由を3つ挙げると説得力が格段に増す
フィンランドでは一定のフォーマット(論理型)にしたがって意見をいう訓練が行われています。基本フォーマットは次のような形です。