F&Aレポート

メンタルバランスのための「聴き方」トレーニング …心が潤うコミュニケーションのために

メンタルバランスのための「聴き方」トレーニング …心が潤うコミュニケーションのために

■日本人で一生のうちに一度でもうつ病になる人は、軽いものも含めて男性で10人に1人、女性は4人に1人とも言われています。メンタル不調は誰がなっても不思議はないのです。メンタル不調になれば、周囲の人とコミュニケーションがうまくとれなくなります。その逆もあります。周囲の人と意思の疎通ができなくなり、一人で思い悩むことからメンタル不調に陥るというパターンです。いいコミュニケーションは、自分のことをしっかり表現できることと、相手のことをしっかり聴くという両輪でなりたっています。■最近のコンカツで人気があるのは、お寺の住職だそうです。「住職なら、おだやかに話をしっかり聴いてくれそう」と、若い女性に人気なのだそうです。しかし「聴く」ことは意外に難しいことです。特に興味のない話を聴くのは辛いものです。今回は日常の中の「聴く」ことに焦点を当てて、心を潤すコミュニケーションを考えてみましょう。

1.愚痴を聴くときは
 愚痴を言っている人は、多くの場合、問題解決をしたいとは思っていません。ただ「聴いてほしい」ということが多いのです。ところが、聴いている側は「何かアドバイスをしなくては」という気持ちになり、「次はこうしたら?ああした?」などのアドバイスをします。せっかく一生懸命にアドバイスをしても、話し手はできない理由をならべて一切実行に移す気配はありません。聴き手は、何も変わろうとしない話し手にうんざりしたり、自分自身のアドバイスが役に立たないことをはがゆく感じたりします。
 愚痴には愚痴の聴き方があるのです。愚痴は「どうにもならないこの状態で苦しい私をわかってほしい」というのが、言いたい事の中心にあります。「聴くだけ」でいいのです。愚痴を言いたいのか、何かアドバイスが欲しいのかわからないときは、率直に訊くという方法もあります。「アドバイスが欲しい?それとも聴くだけの方がいい?」と。
 愚痴は話し手の一方的な見方です。それをわかった上で話し手の話を聴けばいいのです。「それはひどいね」「つらかったね」「それは腹がたつね!」など、一緒に怒ったり、悲しんだりしてくれるだけで話し手の気持ちはおさまります。
 もし、愚痴を聴くことで聴き手が面白くない気分になるなら、「愚痴を聴くのがつらい」と言うことも失礼なことではありません。それをきっかけにホンネで話せる関係に近づくこともあります。

2.会議の席で部下の意見を聴く
 会議の席で、司会者が「何か意見はありませんか」と言ってもシーンとなることがあります。このような状況になるのは「何も考えていない」「やる気がない」からとは限りません。「下手なことを言うと叱られる」と感じている可能性があります。「率直になんでも言える」という信頼関係や雰囲気づくりができていないのです。発言するためのハードルが高くなっていることもあるかもしれません。少しだけやり方を工夫してはどうでしょうか。
(1)何でもたくさんできるだけ出す
 ブレインストーミング方式です。どんな意見も一切否定をせず、とにかく意見を出します。一番たくさんの意見を出した人には、「お茶当番の役目が免除される」など、ゲーム感覚にすると自由に意見を言いやすくなります。
(2)各自が自分の考えをメモする時間をつくる
 いきなり「意見を」と言われても浮かばないことがあります。数分でいいいのです。一人一人が意見をメモに書き、全員が発表します。そうすれば全員参加型の会議になります。誰かが何か言うだろうではなく、とにかく何かを考えようさせることが「話す」「聴く」のコミュニケーションを生み出します。
(3)2人、3~4人のグループに分けて話し合う
 大勢の前では話せなくても、2人なら、3~4人なら大丈夫という人はたくさんいます。「わざわざ手を挙げて、みんなの前で言うほどの意見ではない」と思っている人もいます。いつも声の大きい人の意見が通る会議は、新しい発見や気づき、いい意見が表現されにくい会議となってしまいます。会議のリーダーの「どんな意見でも聴きたい」という姿勢が「どんな意見でも歓迎される」という会議の空気をつくります。「聴く」という行為は、決して受け身ではありません。「話してくれると嬉しい」「あなたのことを知りたい」という態度が表情や声に表れる、つまり聴き手主体の積極的コミュニケーション術なのです。