多根幹雄氏は、パリミキを率いてきた三代目経営者。メガネ事業だけでなく、海外事業や資産運用など幅広い分野に挑戦してきました。スイスに9年間駐在した経験から、海外から日本を見る視点も培い『JAPAN IS BACK』などの著書を通じて「日本にはまだ世界から評価されていない大きな価値がある」という考えを発信しています。
「奥出雲多根自然博物館」は、その多根家ゆかりの地に誕生した日本唯一の「泊まれる博物館」です。化石や恐竜を通して地球と生命の歴史を伝えるだけでなく、地域の魅力を発信する場としても注目されています。
今回は『JAPAN IS BACK』のメッセージから見る「人的資本経営」についてレポートします。
あたり前すぎて、気づいていない価値
人口減少、少子高齢化、経済成長の停滞、国際競争力の低下など、日本について語られるニュースは、悲観的なものが少なくありません。日本人自身もどこかで、「昔の日本はすごかったが、今は元気がない」と感じていたりします。
しかし、海外から日本を見ると、まったく違った姿もあります。
安全であること。街が清潔であること。時間を守ること。食文化が豊かであること。高度なものづくりの技術があること。自然や歴史、伝統文化が残っていること。そして、お客様を大切にする「おもてなし」の精神があることです。
日本人にとっては「当たり前」のことが、世界から見ると大きな価値になっています。ここで重要なのは「価値がない」のではなく、「価値に気づいていない」のではないかという視点です。これは企業経営にも通じます。
企業にも「当たり前すぎて、価値として認識されていないもの」が数多く存在します。
財務諸表には表れにくい、「人の価値」
たとえば、何十年も現場に立っている社員が持つ経験。お客様のちょっとした変化を察知する力。トラブル時の判断力。人を育てる力。地域との信頼関係。長年培ってきた企業文化など。これらは、財務諸表には直接表れにくいものです。
しかし、競合他社が簡単には真似できない、企業固有の強みがあります。
『JAPAN IS BACK』が示す「日本の価値の再発見」という視点は、企業に置き換えると「自社に眠っている価値を再発見する」ことにほかなりません。
今、人的資本経営が注目されている背景にも、この発想があります。
人を単なる「労働力」や「人件費」として見るのではなく、企業価値を生み出す「資本」として捉え直すこと。「今いる人材にどのような価値が眠っているのか、どうやってそれを引き出すのか、継承するのか」ということではないでしょうか。
自社の宝探しから始める「外から見ることで、自分たちの価値に気づく」
人的資本経営では、まず『自社の宝探し』をして見ることが重要です。そのための3つの有効な問いがあります。
- 誰がどんな価値を生み出しているのか
- その価値は、再現、継承できるのか
- 人材への投資が、企業価値にどうつながるのか
『BACK』は過去に戻ることではありません。『JAPAN IS BACK』は、これまで見過ごしてきた日本の価値をもう一度発見し、それを新しい時代の価値へと変えていくことだと捉えることができます。
「私たちの会社には、どんな人材がいて、どんな価値を生み出しているのか」。これを理解し、社内で共有することが出発点になります。
たとえば、「感じがいい」「お客様からよく褒められる」社員を、単なる「接客が上手な人」で終わらせるのか。あるいは「なぜ、この人は信頼されるのか」「どのような行動をしているのか」「他の社員も再現できるか」「売上やリピート率にどうつながっているのか」まで、掘り下げるのか。ここに人的資本経営の違いが生まれます。
その人の強み、キャリア、適正と企業戦略をどう結びつけるか。人的資本経営とはまさに、その接点をつくる経営ではないでしょうか。
