F&Aレポート

わくわく日本語講座9 ~「ある意味」に意味あり?

わくわく日本語講座9 ~「ある意味」に意味あり?

 会議の発言や、会話の中で「ある意味」を連発する人がいます。「ある意味、今回の企画は初めての試みで、、、」「ある意味、広島は観光地なので、、、」というような使い方です。この「ある意味」に意味はあるのでしょうか?

「NHK気になる言葉」(新潮文庫)に興味深い解説がありました。

「ある意味」

 会話の中で「ある意味」をよく使う人はいませんか?

 これに対して、耳障りだという人がいます。なぜでしょう。

 辞書には、「ある」=「はっきり決まっていない物事をさしていう言葉、はっきり言いたくないときにも使う」とあり、用例として、「ある意味では正しい」「ある意味成功だ」と載っています。「まちがいとは言えない」「成功と言えなくもない」というときに使います。

 しかし、最近は、これとは違った使い方を耳にするようになりました。

 例えば、「ある意味、渋谷は若者の街だ」という言い方。

 これらは一般的に言われていうことですから、「ある意味」をつける必要はありません。これは、「まあ」「その」「いわゆる」のような、つなぎの言葉として使っているのですね。「ある意味」の本来の意味とは違いますので、聞いていて耳障りに思うのかもしれません。

「逆に」

 同じような例に、「逆に」というのがあります。たとえば、「明日飲みに行かない?」に対して「逆に今日はどう?」、あるいは、「この件は部長に伝える?」に対して「逆に課長に伝えるのがいいんじゃない?」のような会話を聞いたことがありませんか?

 本来、「逆に」は、対立要素が認められる場面で使われます。後ろに続く言葉に、「反対」の要素がある場合に使われるわけです。

 それが、「それより」「たとえば」などの意味で、「逆に」が使われているのです。「逆に」と言われると、反対の意見を言われそうで、ドキッとすることもあります。これもまた耳障りな言い方と言えるかもしれません。

「正直(言って)、、、」

「正直、昨日は出張だった」のような使い方、よく聞きます。辞書には、副詞として「本当のところ」という意味でも載っています。「正直なところ自信がない」など、本音を言う場合に使います。

 ところが、「この夏、正直、冷たいものばかり飲んでいた」など、本音で言うまでもないことに「正直」を使う人がいます。

 「ある意味」「逆に」「正直」。これらはすべて、本来の意味を失って、ただの前置き言葉=枕詞のようになっています。

 「正直、これらの言葉はある意味使わなくても済むわけで、逆に耳障りです」

番外編「ぶち」

 野球の応援で「かっ飛ばせ?」と言いますが、この「かっ」は、「飛ばせ」を強調する言葉です。他にも「かっ食らう」「かっさらう」「耳をかっぽじってよく聞け」の「かっぽじる」などがありますが、「かっ」が付くことで、言葉の勢いを強めています。この「かっ」は「掻き」という言葉が変化したものです。

言葉の頭について強調する表現はほかにもあります。「ぶちあたる」「ぶちやぶる」。これらは「打ち破る」「打ちやる」の「打ち」と関係があります。室町時代にはすでに使われていて、方言になったと言われています。広島弁の「ぶちうまい」「ぶちええじゃん」は古式ゆかしい表現なのかもしれません!

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